■街を離れて ( 天の川の下で) 準備編

遠征観望のススメ。 出かける前の道具や知識の準備です。


街中での観察対象は、月、惑星、重星がメインに楽しめると他の記事でご紹介しましたが、事情がゆるす方は
天の川の見えるような場所へ出かければよりいっそう星の世界を深く楽しむことができます。
 そのような場所ですと、星座を結ぶのも驚くほど簡単にできてしまいます。 星の数が多すぎて迷う、、という
声もあるかもしれませんが(笑) そして観察する対象も、星雲、星団、系外銀河、と、まさに宇宙を感じさせるものがいっぱい。
 天の川も自分達の住んでいる「天の川銀河」の渦状腕を銀河の内側から見ているのです。 つまり天の川を見たということは
一つ銀河を見たということになりますね。(実は銀河という言葉は、元来天の川に対して使われる言葉ですから少々日本語が
おかしいのかもしれませんね。 )

 ただし、いくら空の状態の良い場所でも月が出ていると月明かりに埋もれてあまり星が見えません。
郊外に出かけて星を楽しむなら月が出ていない時にしましょう。 新月付近の日なら月が出ている時間はとても短く
長い時間観察を楽しむことができます。 

 天の川に双眼鏡を向けてみましょう。 初めてという方はきっと驚くはずです。 まさに星の海。
 特別な知識がなくても、双眼鏡を天の川に沿って動かしているうちに、ところどころぼんやりとした塊があるのに気付くはずです。
 それは大抵星雲です。 よ〜く見るとぼんやりしたものが実は物凄く沢山の星の集まりだったりするものがあります。 これは星団。
 双眼鏡でも主だった星雲や星団は形こそはっきりしませんが、ぼんやりとそこに存在していることが分かってとても楽しめますよ。

 

 北海道某所にて管理人がバイクツーリング時にポータブル赤道儀とデジタル一眼に付属のレンズで撮影した夏の天の川。
 結露して幻想的な雰囲気の写真になってしまいましたが、夏の大三角がよくわかると思います。
     (Nikon D40 ISO1600 露出3.5分 18mm相当 アイベルCD-1にて追尾)

 観望地に付いてまずしなければならないのは、自分の目の暗順応です。 
 人間の目は暗闇に慣れて性能を発揮するまでにおおよそ15分
ほどかかると言われています。 
 目が暗闇になれてくると自分でも驚くほど明かりがないのに周りが見えたりします。 星明かりを実感できる一瞬です。
 ですが途中で明かりを見てしまうとまた目が慣れるまで15分やり直しです。 その為観望地では自分の目もそうですが、
 他の天文ファンの既に暗順応が終わった目を戻してしまわないように明かりは極力つけないようにしなければなりません。
  星図を見たり機器を操作する場合に明かりが必要になる場合があります。 こんなときは赤いセロファンを2,3枚重ねて
 減光したヘッドライトがお勧めです。 観望地にいくと天文ファンの殆どは赤いヘッドライトを装着しています。 
 人間の目が赤い光に対して感度が鈍いのが理由です。 
 自動車のブレーキランプが赤色と日本の法律が定めるのもその為です。後続車ドライバーの目が眩惑されて
 事故に繋がらないようにという配慮ですから、より暗闇で活動する私たち天文ファンはなおのこと気配りをしたいものです。

 暗順応が終わると今まで見えていなかった暗い星まで見えるようになり、さらに星の海を実感できることでしょう。
 また望遠鏡や双眼鏡を使う眼視観望の場合にも暗順応が終わっていないと淡く暗い星雲や系外銀河が見えないこともあります。
 是非暗闇に目を慣らす必要があることを忘れないでください。そして観望地での明かりは赤ランプと覚えておいてください。
 (赤色ランプの例



 あとこれから観望を始めようという方に覚えておいて欲しい大切なことがあります。 それは

 人間の目では双眼鏡や天体望遠鏡を使っても、
 写真のような華やかな色つきの映像や詳細は見えない。


 ということです。 

 双眼鏡や天体望遠鏡の力を借りても、人間の目で見える星雲や星団、
 系外銀河は見えるか見えないか、というくらいの淡い光のシミ程度のものです。 


 口径が20cmあたりからやや詳細の構造が見える天体もいくつかありますが
 それでも色までは見えません。 30cmクラスになるとやはり色は難しいですが見ごたえのある映像になります
 でもやっぱり写真のような派手さはありません。

  星雲や星団に初めてトライする方が直面する問題がもう一つ。 そこにあるハズなのに見えない!という状況。
 月や惑星の場合にはじぃーーっとアイピースの中を凝視していけば覗きなれて詳細が見えてきました。
 ですが星雲や星団はその逆です。 じぃーっと凝視してはいけません。 そらし目でぼんやり見てやると
 あるときフッと何かあるのに気付くことがあります。 淡く暗い星雲は直視すればするほど見えなくなってしまうのです。
 これは人間の目の構造が中央部ほどカラーでものを見る細胞が多く、周辺ほどモノクロな代わりに感度が良い細胞が
 多くなっている為です。 暗闇になるとものの色がわからなくなりますよね? あれはモノクロのほうの細胞が主に
 使われているからです。 カラーの細胞のほうは感度があまりよくありません。 ですから真中を使ってにらみつけても
 見えなくなってしまいます。  そうですね、例えるならば、隣にちょっと可愛い子が居たとしましょう。
 でも直視できない、、、、視線は前を見ているのにあなたが見ているのはお隣の子。 でもなんとなく見えますよね。(笑)
 ちょうどそんな感じのわき目でアイピースを覗くのが星雲、星団の場合のコツです。

 天体望遠鏡を購入すれば写真のような物凄い世界が待っているとワクワクして、実際に覗いてガックリ、、、
 あるいは予想と反する見え方ゆえに対象をいつまでも見つけられないというお話はよくあります。
 天体望遠鏡メーカーの宣伝の仕方にも少なからず功罪があると思える一面ですが、入門書をしっかり読んでいれば
 これも実は分かるはずです。 最初にまず入門書を、というのはこうした様々な誤解を払拭しなければこの趣味を
 存分に楽しめない状況にあるという事からでした。

  本や雑誌でみるような天体写真は、フィルムやCCDで長時間光を蓄積した結果のものです。 
 人間の目では淡い光に色を感じることはできませんし、画像処理も施せませんから詳細を
 くっきりみることもできません。  

 この誤解はどうも日本で特に目立つようです。 日本の場合天体写真が雑誌等でも
 メインにもってこられる傾向がある為か、諸外国のように眼視観望を主に楽しむ人が少ないと思います。
 また、昨今の過剰とも思える派手な画像処理に目が慣れてしまうと余計にホンモノがしょぼくれて見えて
 しまうのではないでしょうか。 メガスターの派手派手な天の川を見て、本物の天の川をみてしょぼくれている
 という感想をもたらすのと同じような状態かもしれません。 そんなもの最初から見えていないのですから。

 諸外国の天文ファンの多くは眼視の本当の楽しさを知っていてとてもうらやましく見えることがあります。
 彼らはマスコミに踊らされるよりも、自分たちで確かめながら、より自由な発想でやっています。
 (海外で写真に適さないといわれるフォーク型架台にシュミットカセグレンという組み合わせが流行る理由がわかるでしょう)
 日本人はつくづく写真好きな人種のようです。 私も嫌いじゃないですけど。(苦笑)

  とはいえ人間の目というのは凄いもので、覗きなれてくると最初どうということがなくても、
 どんどん詳細が見えてきたりします。 かなり脳内で補っているようです(「心眼」なんてよくいいますね)

 また、見えるか見えないか、、というかすかな光でもそれは本当に星の一部を受け止めた
 ということでもあります。 何千年、何百万年も宇宙を旅して、ようやく私たちのところにたどりついた
 
ホンモノの星のカケラです。

 事実、恒星が核融合反応をした結果放出される粒子の一部が私たちの目の網膜に当たり、
 受け止めたことになります。  ですから本当に星の一部です。 望遠鏡や双眼鏡は
 そうした星のカケラをせっせと集める道具だと言い換えることもできるでしょう。

 そう考えると、たとえささやかで、光のシミにしか見えなかったとしても凄いことだと感じませんか。


■役立つガイドブック

 双眼鏡で漫然と天の川を眺めるのもステキですが、そこにある星雲や星団、天の川以外の場所にもみられる系外の銀河系なども、
 どこにあるのかが分かればグッと奥深く楽しむことができますし、より宇宙を実感できるはずです。
 そうした星雲や星団の探し方を助けてくれるのが、ガイドブックや星図です。 市街地では星雲や星団は殆どたのしめませんが
 天の川が見えるような星空の下ではよりどりみどりです。 管理人のオススメをご紹介します。


「はじめての天文シリーズ 星雲星団を探す」 
  浅田英夫 著 スカイウォッチャー編集部 編   立風書房 1785円(税込)
  ISBN 978-4-651-74532-9 (4-651-74532-6)

  

   これから星雲、星団観望を楽しもうという方が最初に手にするのによさそうな一冊です。
 双眼鏡で無理なく探せる対象以外載せていないのがポイントでしょうか。 大口径の望遠鏡や
 写真で撮影しなければ確認ができないような探すのが難しい対象はあえて出さずに、
 確実に初心者でも見つけられるものしかのせていないのがいいです。 実際に見つけたときの
 喜びを実感してもらうのに大変気配りがされています。 また眼視では決して写真のように
 見えないこと、では実際にはどのくらいの感じに見えるのかも例を示して惑わされないように
 されています。 どうやら最近絶版になったようで在庫切れのところが多いですが、時折古書や
 店頭でみかけることがあります。 初心者の方、見つけたら是非どうぞ。


「星雲星団ウォッチング―エリア別ガイドマップ 」 
  浅田英夫 著                  地人書館 2100円(税込)
  (ISBN:4-8052-0501-6
 

  実際の観望フィールドで愛用者の多いガイドブック。 私もこれを1冊バラしてクリアファイルに入れ、
 夜露でヘナヘナにならないようにして使っています。 こちらは眼視では捉えられないような対象も
 入っており、写真撮影をする人も導入や簡単な構図決定に参考にしています。
 7X50の標準的な双眼鏡やファインダーの視野が○で描かれ、その中に見えるであろう範囲の星並びと
 対象となる星雲や星団の見つけ方を案内しています。 この本で手動導入を一生懸命された方も
 結構多いのではないでしょうか。 同著者の「星雲星団をさがす」より初心者向けではありませんが
 長く使えるガイドブックになりますのでこちらもオススメです。 これ1冊と双眼鏡だけでもかなり
 楽しめるはずです。

■星図

 街中では見える星も少なく、学習用星図のような簡易なもので十分でしたが、天の川が見えるようなコンディションの
 良い星空ですと見える星の数もグッと増えてより本格的な星図が欲しくなります。 天体望遠鏡も自動導入が全盛となり
 星図などなくてもオートでやってくれるから要らない、という声もありますが、管理人はまずは手動導入にてある程度
 星の位置関係を身に付けるべきだと考えていますので、星図は積極的にオススメしています。
  ポルタな方、ドブな方、自動導入のないマニュアルな赤道儀の方、ガイドブックと合わせてお持ちになりますと
 星の海を自由に渡ることができますね。 眼視観望もやりこんでいくとさらに詳細な星図が欲しくなる場合もあるはずですが
 とりあえず中堅どころをご紹介します。 いずれも管理人が愛用していてオススメしてもいいかなと思ったものです。


「標準星図2000」 
  中野 繁著                  地人書館 6000円(税別)
  ISBN4-8052-0581-4
 
  
  パソコンでプロットされた星図が全盛の時代ですが、この星図は手書き星図です。
 といいましても版が手書きというのではなく、記述方法が手作業という意味合いですが。
 自動作図された星図とちがって、実際に見える星のイメージとかけはなれておらず、
 観察者への気配りを感じずにはいられません。 自動作図のものですと、星の明るさを
 丸の大きさで表現するのですが、その度合いがキツすぎて何がなんだかわかりにくいという
 ものがあります。 でもこちらはきちんと自分の目で星をみてこられた方が書いただけあって
 そのようなことはなく、管理人も大変気にいっています。 おそらく最後の手書き星図になるでしょう。
 大きい本ですのでフィールドでは使いにくいはずです。 私はコピーしたものをクリアファイルに入れ
 手書きを加えつつ自分の使いやすい星図にしています。 これから長く星とつきあおうという方、
 決して安くはありませんが、星図は機材として考えた場合最も重要なものです。是非お手元に。



「実用全天星図 Star atlas 2000」 
  天文ガイド編集部/編                  誠文堂新光社 4,410円(税込)
  I978-4-416-29917-3 (4-416-29917-6)
 
  
  
   実際の観察フィールドでの使用を考慮した、その名のごとくの「実用」星図。
  写真は書店で販売しているときの箱のものです。 中をあけると樹脂製のバインダーに、耐水紙に印刷された
  折込の星図が束ねられていて、リング綴じになっているので開いて見やすくなっています。
  天の川等のフルカラー印刷は自宅で見るにはいいのですが、観望地では赤いヘッドライトで見ることになるので
  実はいろいろ見づらくなってしまうという落とし穴があります。 ですがそれを差し引いてもかなり使える星図
  ではあります。 レイアウトや記述は好みもありますから一概にいえないのですが、星雲の形状等が写真を撮る方
  には少々使いにくいかもしれません。 上の標準星図2000のほうは写真の方でもかなり近い表記になっているので
  不満はないと思うのですが。  なんだかんだ言っても管理人の車の中にはいつも1冊これが入っていて、
  結構出番がありますから持っていると安心感のある一冊だと思います。 

■双眼鏡のススメ

 天体観察というとどうしても天体望遠鏡が先に登場してしまうのですが、管理人は双眼鏡も欠かせない道具だと考えております。
 もし天体望遠鏡か双眼鏡かどちらか選べ!といわれれば双眼鏡を選ぶかな。 
  私はガイドブックと双眼鏡だけを持ってバイクで郊外の天の川が見えるような場所にでかけて寝転んで星見をする事もよくあります。
 また、天体写真をやっていて望遠鏡をカメラにとられてしまう時なども双眼鏡と星図で楽しむ事が多いです。

  これから郊外での星めぐりを楽しもうという方にも、是非双眼鏡をお一つオススメしたいと思います。まだお持ちでなければ
 是非入手してください。 単体で楽しむのもいいですし、星がそれこそ沢山見えるような場所ですから、ガイドブックや星図で
 目的の星雲や星団がうまく見つけられないような場合に双眼鏡は良い助けてになってくれますよ。

 双眼鏡は、割とどこでも売っている商品ですが、実はかなり要注意の製品だったりします。
 特に星を観察する私達にとって双眼鏡選びは昼間に使う人たちよりグッとシビアになります。 ではどんな双眼鏡を
 選んだら良いのでしょうか。 これも望遠鏡の選び方と同じく
 天体望遠鏡やフィールドスコープを扱う専門店での購入
が失敗が少ないです。
 天体に適した双眼鏡にはどのような要件が求められるのでしょうか。 いくつ列挙してみます。

  1 倍率は低めで、6〜10倍の間でチョイス
  2 手持ちができる(手でもって星のブレが気にならない)範囲の重量のものにする。
  3 1,2を満たす中でできるだけ口径が大きいものを選ぶ
  4 アイレリーフが長いものを選ぶ。
  5 空気接触面にマルチコートが施されており、できればプリズムもコーティングしてあるもの
     (赤い色をしたレンズのものとは違います。あれは色がおかしくなるので私はNGと考えます)
  6 暗闇で極端に明るい光源を見たときにゴーストやフレアが発生しない、あるいは少ない
  7 色収差が少ない
  8 周辺像の乱れが少ない
  9 8の許せる範囲で見掛け視野が広いものが心地よい。
 10 BAK4かBPG2(これはあまりない)でできたプリズムを使ったものを選ぶ。
    (とはいえBK7でもそれほど悪くないものもあるので一概にはいえませんが)



■お店での双眼鏡チェック法

 それでも、昼間に絶好調の双眼鏡も夜にスターウォッチングに使うとダメダメだったり
 逆に星には良くても昼間はどうも冴えない場合もあります。
 双眼鏡も用途に合ったものがあるということでしょう。 
 そうなるともう少し具体的な選別方法が知りたいところでしょう。

  実際にはカメラ屋さんとかのお店の中で覗いても実はイマイチ見分けがつきにくいので
 できれば夜間にテストできるお店だと良いのですが。
 おおざっぱな見極め方はこうです。

  【昼間の場合】  

 1 コントラストと色収差(色にじみ)のチェック方法

    よく晴れた日にお店の外にある電柱や建物の淵の背景が空になるところを見る。
    するとジャスピン位置で淵に青〜紫のニジミが出るものがある。
    またどれだけシャープかもおおよそこれでチェック可能です。
    気になる製品2つを交互に見比べると、なんとなく見たときとこうもちがうのかと
    きっと驚くほど差があるはずです。  

  2 迷光とケラレのチェック法

     視野が削られてしまっていないか実はよく分からないのですが
     ひっくりかえして対物がわから明るいところをみてやります。   
     (相手側に接眼レンズをむけてやる) すると明るい丸になって見えるはずですが
     これがイビツに八角形とかになっていたら光がいちぶ遮られています(ケラレ)
     またこのときに明るい丸の周囲が真っ暗に近いか、どこか反射して中で
     光っているかもチェックしてみてください。
     これが真っ暗なほどシャキッと締まった像が楽しめることが多いです。  

 3  湾曲のチェック法

    双眼鏡はたいてい視野の淵のほうほどゆがみやすい傾向があります。
    建物の垂直な壁やビルの窓枠などを真中から視野の淵にもっていって
    ぐにょーっと樽型に変形していかなければOK。 多少はいいのですが
    あまりにヒドイやつはやめたほうがいいかな。あと像がぼやけるのは論外です。

 【夜間の場合】

   1 コントラストと色ニジミ
      暗いところから猛烈に明るい光源を見てやります。
      たとえば街路灯でバックが真っ暗なところ。 
      色にじみがあると蛍光灯などモロに淵が紫〜青に滲みます。
      物凄く明るい蛍光灯の背景が白くカブルようなものだとコントラストが悪いです。
      良品だと近くに明るい光源があってもすぐ境目のところでも真っ暗に見えます。  

  2 これは昼間と同じ。 
     蛍光灯なんかをひっくりかえして対物側から見る

  3 これは昼間のほうがやりやすい  

  4 ゴースト、フレアの有無
     これがものすごく効きます。 でもこれは夜間しか具合よく試せません。
     おなじく背景が暗いところにあるものすごく明るい光源や、物凄く明るい部分のある
     夜景などを見て、すこし動かしてみます。 
     するとなにか変な光がついてまわるようなものはゴースト。 
     大抵は点対象に出てきます。 高倍率のものほどこれが出やすくなります。
     フレアは明るい光源を見た時に淵にぼんやりと広がるヤツ。
     これもないほうがしまった像が楽しめます。     
     日中よさそうな像の双眼鏡でも、夜間にこれをやると
     ボロボロで脱落するものが多数です。  

  星見の双眼鏡ではこの4番のテストが結構重要だと感じます。  
  鳥屋さんも結構シビアに選びます。 逆光で観察することが多いので
  枝なんかみるとすぐに色収差がバレますし、水鳥なんかだと夕方水面の反射で
  コントラストがわるいと肝心な鳥がクッキリみえなくてキモチワルイのです。
  ゴーストまで出ちゃうともう双眼鏡を池に投げ込みたくなります。(笑)


 ざっと見て、そこそこ長く使えそうな双眼鏡は、あまり安いものではありません。
 だいたい3万円くらい用意すれば割と安心感のある製品を手にできます。今ではこれでも安い部類だと
 思っているのですが、最初は「ええ!?双眼鏡に3万!?高すぎ」と思った頃の自分を思い出します(苦笑)

 2008年1月現在で入手可能で3万以下の価格対性能がよさそうな双眼鏡をいくつか例示してみます。
 もっと良いものがあるかもしれませんが、管理人の独断と好みにてチョイスしてみました。


 ビクセン アルティマ7X50

  参考価格 26000円前後
  

ビクセン アルティマ Z7×50


   対物レンズ、接眼レンズはもちろん、プリズムに至るまで全ての空気接触面にマルチコートを施した
  安価な割に手がかかっている双眼鏡です。 プリズムが小さくなっている為7X50としては大変軽量で
  扱いやすいと思います。 視野も明るく10万以上する高級機にはもちろんかないませんが像質もしっかり
  しておりゴーストやフレアも殆どみられません。 やや実視界が狭い印象がありますが(7°くらいほしいかな)
  この価格帯ではかなり良い買い物ではないでしょうか。 総金属製で質感も悪くありません。 
  防水ではありませんが防水は重たくなるのでトレードオフで。 無難中の無難という感じです。
  中国製の安価な双眼鏡が溢れるなかアルティマシリーズは健気にも国産を貫いております。

 

 ビクセン アルティマ8X56

  価格 17800円前
  

   同じくアルティマシリーズ。 こちらはすでに生産が打ち切りとなりましたが、惜しむユーザーの声で
  同社ウェブショップ(ビクセンマーケティング)のオリジナル商品として復活した8X56です。
  日本のバックが締まらない空ではひとみが開ききらないので7倍より8倍、、という声も一部ではあります。
  私はどっちでしょう、、 未だ7X50捨てがたしと思う一人ですが口径があれば少々倍率が高くても
  それも良いと思います。 ですが口径が増すと重たく、、、、 でもこのアルティマは口径があるのに
  いつも大変軽量に作ってきます。 男性でも1kgを越えると手持ちは困難になりますが900gに
  抑えられています。 光害のややある場所では7X50よりこちらのほうがいいかもしれませんね。
  それにしてもこの内容でこの価格は、破格ではありませんか、、、 国産品です。


 ビクセン アルティマ9X63

  価格 25800円
  

   またもやアルティマシリーズ。すみません、管理人がビクセン贔屓なのもありますが、このシリーズ
  好きなんですよ。^^; この9X63はもともと海外向けに生産され、日本では過去に協栄産業から国内に
  一部販売されていました。 おそらく大きいので外人さんの手にあうように、という事だったのではと
  思います。 この9X63は私も熱烈愛用中です。 おそらく手持ちが可能な双眼鏡では最大口径では
  ないでしょうか。 いくつも双眼鏡を持っているのですが、これはちょっとしたインパクトがあります。
  覗いてすぐに「わぁ!こりゃ明るい」と口径の威力を実感できますし、口径ゆえに解像感もかなり高いです。
  少々色収差があるように思いますが大変満足しています。 こちらも生産中止となりましたが、熱烈な
  支持層があるようで、同じくビクセンマーケティングのオリジナル商品として再生産されました。
  60mmといえば昔の屈折望遠鏡の口径です。 よくこの重量に納めたと思います。
  女性には辛いかもしれませんが、平均的な男性の腕力ならば難なく手持ちで扱えるでしょう。
  以前は36000円くらいしていましたからかなりお買い得だと思います。 もちろんMade In Japanです。


 一二三光学器械7X50

  価格 13000円前後

  【写真の解説】
   最上段: アルティマ9X63とのサイズ比較。右側が一二三7X50です。
   中段:クラシカルな「ボシュロムタイプ」の外観。総金属製で表面の処理はシボ皮
        (昔のカメラでよく外装に貼ってあった黒い合成皮革)が丁寧に継ぎ目なく貼られている。
   下段:対物レンズのマルチコートの様子。左が比較のアルティマ9X63.右が一二三の7X50。
       反射が大変少なくこの価格帯では秀逸だと管理人は感じた。内部のつや消し処理も丁寧。
       もちろんビノホルダーの取り付けも可能。 
       キャップには日本語で「ビノホルダーを取り付けるときは外します」
       と書かれているのがいい。 確かに変にかっこつけて英語表記にしたくても良いですね。
  

    主にOEM生産を手がける一二三光学器械の7X50です。 製造元であって販売元ではないという立場から
  国内に普通に流通していないのが惜しいのですが、同社のアウトレットコーナーで時折少数販売されています。
  私もこちらの7X50(BAK4ではなくBPG2プリズムですがほぼ同等です)を愛用しておりますが、この価格から予想
  していたよりずっと見え味がよく、いい意味で期待を裏切られました。 アルティマはどちらかというとカチッとした
  というか少々ギラギラした感じの星像ですが、こちらはしっとりとおちついた星像で、収差がよく抑えられているのが
  わかります。 実視界も7°あり7X50で安価で良質な双眼鏡としてはイチオシかもしれません。
  是非普通に販売してほしいのですけどね。 決して有名でもありませんが実に真面目に作られています。
  以来こちらでいくつか購入しているのですが押し並べて満足度は高いですよ。 アウトレットで出ていたら是非どうぞ。
  はっきりいってこの双眼鏡も破格です。こんな値段でこの内容は普通買えませんよ。しかも国産で。



 なお、双眼鏡の世界は大変深いものです。 さらに詳しくをお知りになりたい方は、是非こちらのページを
 ご参考になさってください。 私も同感だと思う部分が多いです。

    「双眼鏡愛好会」


■観望地でのマナー

 これについては人によって見解も異なりますし、やや精神論的な側面もありますからあまり書きたくなのですが、
 それでも、知っていると知らないとでは気持ちの充足感も違ってきますからあえてご紹介します。

 天体観察に適した観望地は大抵標高の高い山や高原等の山の中や、山頂の駐車場だったりします。
 もちろん天文趣味な方以外に、早朝から登山に望もうとする山岳愛好家の方々、キャンパーの方、無線趣味な方、、、
 様々な目的でやってくる人たちの共有の場所であることを忘れてはなりません。

  天文ファンにとって、特に天体写真ファンにとって、撮影中に近くで明かりを付けられると
 大変腹立たしい気分になるのも理解できるものですが、そういう場合に怒鳴りつけたりするのは
 言語道断だと考えます。 
 彼らは知らないわけですし私達天文趣味の人間だけの場所ではないのですから、
 ここは自然を愛する者としてじっと我慢するくらいの心のゆとりが必要ではないでしょうか。 
  もっとも天文ファンといいながら明かりを付けまくり、大騒ぎするというのは最低と言わざるをえませんが。^^;
 特に天体写真をされている方の中に迷惑をかけてしまう方が散見されますので自分も注意したいと思います。

  決して決まりがあるわけでも、規則があるわけでも、そうしなくちゃならない義務があるわけでもありませんが、
 自分がされたらいやなことは、他人にもしないようにする気配りができますと、これから幾度も通うことに
 なるであろうその観望ポイントで仲の良い天文ファンの友人ができるかもしれませんし、楽しくやっていけるんじゃないでしょうか。
 以下には一般の方にではなく、これから天文趣味をやっていこうという方が知っていると他の仲間に迷惑を掛けることなく
 気遣いができるだろうポイントです。 

  1 観望地では極力明かりを付けない。 付ける場合にもし写真を撮っていそうな方がいたら一声かけてあげる。
  2 明かりを使う場合でも白色LED等の白い明かりは使わない。 ヘッドライトは赤く減光したものにする。
    ノートパソコンのモニターも暗闇でギリギリ見えるくらいにフィルムを貼ったり赤い下敷きをかぶせたりして減光する。

  3 到着したら付近の天文趣味の同志に挨拶を。
  4 車をアイドリングしたり、発電機を回さない
  5 自分のだしたゴミは一つ残らず持ち帰る
  6 混雑している場合には広々と場所を占有せず、ゆずりあいの気持ちで
  7 音楽を流したり、むやみに騒いだりして静寂を壊さないように(静かに星を楽しみたい方もおられます)
  8 他人の機材や取り組み方をけなさない。(迷惑とならなければ、それぞれあっていいと思います)

 こんなところでしょうか。 しばらくこの趣味をやっていくと、どうすると仲間に対して気配りができるのか分かってくると
 思います。 相手を気遣う気持ちさえあればきっと楽しくやっていけるはずです。 あまり堅く考えずまずはお楽しみください^^


 これにつきましてもいくつかWebで書かれているページがありますから参考にどうぞ。
 どれが正しいという事ではなく、こういう気配りも可能だという目で見るとよろしいのではないでしょうか。

  法政大学天文研究会HP内
  OH BE HELLO's Photo Gallery内
  Dr. Shiva's Homopage内

■では、肝心な場所はどこ!?

 

 天体観察に適した、いわゆる「星見スポット」は、割と仲間の間だけで内密に保たれる事が多かったように思います。
 といいますのも、上記のごとくマナーを乱す人により場所がダメになることを防ぎたいという思いがあったのでしょう。
 また特に天体写真をやるような方ならばできるだけ邪魔が入らない場所でひっそりとやりたいと考えていたに違い有りません。
 とっておきの場所は内緒にしていて、観望地でよく出会う信用できそうな同志に口伝で教えられる事もしばしば。
 上で紹介したようなマナーを心がけるのも最後は自分の為にもなっているように思えます。

  さてさて、今はインターネットがつかえる時代です。 Googleでざっと検索してもいくつか星見スポットは見つかりますね。
 当方がブックマークしている中から有用そうなものをいくつかご紹介します。

Japan Astronomy 内 全国天体観測地マップ 
Dr.Shiva's Homopage内 星見の場所FAQ
PIZの宝石箱内 星空観望地案内
法政大学天文研究会HP内 主な観測地の紹介
LARGO♪HP内 星見スポット
ASTRO PAGE内 お勧め観測場所


 おいしい観望スポットご存知でしたら管理人にもこっそり教えてください(笑)


■気をつけること

 出かけようとする場所は、標高が高い場所が多く、しかも街から離れた夜間です。
 安全に十分注意すべきはもちろんのこと、予想に反して気温が下がるので防寒対策は念入りにしないと
 簡単に体調を崩してしまったり、行ったら即引き返す、という事になってしまいます。
 夏であってもブルゾンを持参するくらいの心構えが必要です。 冬場になりますと半ば登山客じゃないか、、
 というくらいの防寒装備で丁度いいくらいです。 とにかく防寒は念入りに。 
  また、冬場は車の冬支度もお忘れなく。 夏タイヤの方など登りきらない場合がたまにあります。
 チェーンもお忘れなく。
 
 (写真は管理人がある観望地へ向かう途中。 途中でスタックし大変でした。 この寒さの中で星を見るとは
  正気の沙汰ではないです!?(苦笑))

  普通の明かりは使えませんから、赤いヘッドライトは天文趣味には必需品です。
 山岳用品店でも赤い減光カバーのついたヘッドライトを売っています。 眩惑防止に気配りするのは
 自分の足元を守りたい登山家も同じのようです。 また市販のヘッドライトに細工しても良いですよ。

 また、できれば誰かを誘っていきましょう。 単独で山中にいると思わぬトラブルに出くわした際、
 助けてくれる人がいません。 山奥ですと野生動物の襲撃も割とよくある話です。
 私も一度イノシシにやられて肝を冷やしましたし、熊とのニアミスもありました。
 動物はまだしも、アヤシゲな人間はもっとタチが悪いです。 是非ご自身の安全にも十分
 気配りを。 もし野生動物が出そうな場所で一人だけになってしまったら、ポケットラジオで音を鳴らすのは
 効果的です。 動物たちは基本的に臆病ですから人間の存在に気付けば近寄ってきません。

  また火の気を使っても問題なさそうな場所でしたら、お湯を沸かすアウトドア用コンロや水、インスタントコーヒー
 などありますと暖を取る事ができますよ。 山火事を起こしたりしないようご注意ください。

 また、観望地に幾度か行けば必ず遭遇するのが、夜露です。 望遠鏡や双眼鏡はもとより
 あらゆるものが結露してべたべたになってしまいます。 本など外にだしたままにしておくと
 雨にぬれた本のように悲惨なことになりますし、電子機器も破損することがありますから
 上にシートをかけたり、こまめにケースに入れる等気配りされるといいでしょう。

  まずは一度行ってみて、星見の先客がいらっしゃったら挨拶を交わしできるだけ早く仲間を見つけてください。
 分からないこと、知っておくといいこと等もそうした人たちが良い教え手になってくれるはずです。
 本心は少しでも同じ趣味のお仲間が増えたらいいなと願っている天文ファンは多いと思います。


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