機材の保守、調整をしっかり行い、末永くベストコンディションで使いましょう!^^
お約束ですが、分解、改造等は自己責任でお願いします。
■アクロマート望遠鏡の色収差(青ハロ)対策 小技集 フリンジキラー等
当HPの管理人もアクロマート屈折での撮影は好きです。 2008年1月の当HP開設当時から
フリンジキラーを用いるなど短焦点アクロマートでの撮影は積極的に実験をしてきました。
そこで、良好な結果を求める方にはお奨めしませんが、まず撮ってみたい、とか、あえてチャレンジしよう
という方のために、アクロマート屈折での天体写真ノウハウをまとめてみました。
開設当時のコンテンツや、当HPの掲示板に管理人が投稿してきたアクロ情報の集大成
エニョール式短焦点アクロ撮影法(笑)、公開しちゃいます。^^
廉価に大口径が得られるアクロマート屈折も、眼視観察で快適に使えるよう設計が調整されている為、
ご存知のように写真撮影に用いると盛大な色収差(青ハロ、赤ハロ)のために見苦しい写真になります。
これは、目であまり感度が高くない色域については色収差が補正されていない事が原因しています。
目で見えないものも、写真なら写ってしまうのです。
そして色収差は口径に対する焦点距離、すなわちF値が小さい(光学系としては明るい)ほど強烈に
なってしまいます。 写真撮影に用いる場合には、F値が小さいことが好まれる事もあり、アクロマート屈折
も眼視用といいつつも短焦点のものが、やたら増えてきました。
初心の方は、とにかく大口径のものがいいと書いてあるWebの情報や初歩の初歩しかカバーしない
入門書を読んだだけで望遠鏡を選択してしまう事が多くなってきている為か、大口径かつ短焦点な
アクロマート屈折で天体写真を、、、と考えるようです。
しかし短焦点アクロマートでそこそこ見栄えのする天体写真を撮影するのは、至難の業です。
こと、デジタル一眼になると、フィルムのようなイラジエーション(フィルム粒子間での乱反射)が
無い為に、フィルムでは、やわらかな描写の中に収まっていた色収差までモロに出てしまいます。
そのため、デジタル天体写真には一般的にアクロマート屈折望遠鏡は不向きです。
それでも昔の望遠レンズとフィルムカメラで撮影したような渋い天体写真がノスタルジックでいいな、、
という方や、ゲーム感覚であえてアクロマート屈折でどこまでやれるかを楽しむマニアックな向きもあります。
本気で金欠なので、「んなこと わかっとるわい!」という場合もあるでしょう。
対策の種類
アクロマートの色収差対策には以下の方法があります。
1 光学フィルターによる除去
2 感光材料の選択
3 画像処理による除去
1の光学フィルターは、普通にカメラで用いるフィルターから、天文用フィルターまで
効果のあるフィルターがいくつかあります。 期待できる効果や予算にあわせてどうぞ。
以下にその種類を紹介します。
1 バーダープラネタリウム製 フリンジキラー
眼視観望から写真まで使えるという謳い文句のフィルター。
近似の製品ですとマイナスバイオレットフィルターや、セミアポフィルターなどがありますが
特性から最も写真に使えそうな一枚です。 以下のフィルターの中で一番強力な効き目と
崩れの少なさが魅力ですが、やや高額です。 48φのものが2インチスリーブなどに
ねじ込みできるので、そこに取り付けるか、そうでないものは、片側が48φになった適当な
ステップアップリングやステップダウンリングを使ってレデューサの前などに取り付けます。
かなりの色収差がカットできますが、視野が若干黄色く着色される為、画像処理等で
修正するとよりよくなります。
フリンジキラーを用いて、ポジフィルム(コダックE200)にて撮影したM31。
かなり強力に青ハロが除去されており、フィルム併用とあいまって昔の望遠レンズで撮影
したような雰囲気を楽しめます。
2 フジフィルム製 アセテートフィルター SC42
アセテートフィルムでできた色素フィルターです。 シート状のものが密封されたパックで
販売されています。 ゼラチンフィルターの流れから出てきた製品です。
普通はカメラレンズの先に取り付ける、フィルターホルダーに挟んで使いますが、天体写真で
使う場合には具合が悪いので、フィルターをハサミで丸くカットしてレデューサの前などに
はさんで用います。 ステップアップリングや、不要なフィルター枠を2つ用意してそこに挟んで
固定してもいいです。 1枚1000円程度なので、手軽に試してみるにはいいと思います。
SC42は青ハロにあたる色域をシャープカットするフィルターですから、青い星雲などもある程度
道連れになります。 赤い星雲には使いやすいと思います。 しかしながら、やんわりとカット
するので強烈な除去とまでは行きませんが、ある程度自然さをのこしつつカットするにはSC42
あたりがよさそうです。
3 フジフィルム製 アセテートフィルター SC46
同じくアセテートフィルターです。 SC42では足りない、、もっと激しく除去したい!
という狙いの方にはSC46がいいでしょうか。 驚くほど青ハロがカットできますが、視野がSC42
よりも黄色く着色され、青の色域もごっそりもっていかれるのでかなり不自然なカラーバランス
になってしまいます。 画像処理で戻そうにももとからカットされたものは出てきませんから
背景に散光星雲などがない対象には有効かと思われます。
4 モノクロ用コントラストフィルター Y1
最近は殆ど入手困難な、モノクロ写真用のコントラストアップ用フィルターです。
モノクロ写真の場合には、黄色系のフィルターを入れることで、コントラストが向上するため
描写に応じて黄色の濃さをかえたものが販売されています。 その中でももっとも弱いものが
Y1です。 Y2は現在でも販売されていますが、Y1はなかなかお目にかかれません。
カメラ屋さんのジャンク品コーナーや、中古フィルターコーナーにときどき捨て値で出ていますので
見つけたら合いそうな径のものをゲットしてください。 効き目としては、上記のSC42とSC46の
間くらいの青ハロカットが可能で、バランス型という感じです。 見つけたらお奨め品。
中古ですとφ52のもので700円〜1500円程度で入手できるのではないでしょうか。
5 色温度変換フィルター W2
青空の下で全体が青みがかってしまったり、夕刻に、いろいろなものが暖色系になってしまい都合が
悪い時や、逆に強調したい時に色温度(色味)を調整するのが色温度変換フィルターです。
光源の光色を変えるため、削り取るという方向性のフィルターではなく、処理しやすいかもしれません。
このフィルターについては管理人自らまだテストしていませんが、当HPの掲示板で
よく投稿してくれるAyaさんから教えて頂きました。 いずれ実写テストします。
これはすなわち、デジタル一眼を用いるか、フィルムカメラを用いるか、フィルムの場合にはネガフィルムか
ポジフィルムか、その銘柄はどうするか、、はたまた冷却CCDを用いるのか?という選択です。
殆どの方が天体用に改造されたデジタル一眼レフでしょう。 冷却CCDのような高額な製品を購入する層が
アクロマート屈折を用いるとは考えにくいので、あるとすれば、あとはフィルムです。
特にアクロマート屈折で撮影する場合にはフィルムを使うことを積極的にお奨めしたいです。
フィルムは、赤い星雲が写るものが近年少ないのですが、無いわけではありません。
また現在あるものは、感光材の性能も向上してかなり良好な映像を楽しむことができるように
なっています。 ネガフィルムで赤い星雲が写るものは現在発売されているものには少なく、
あまり綺麗な色味に写らないので、ポジフィルムをお奨めします。
天体写真には定番中の定番である、コダックのE200は、ブローニーサイズは製造中止になりましたが
現在でも35mmフィルムは継続販売されています。 とにかく鮮烈に赤い星雲が写ることと、
増感現像した時の粒子がとても細かいので本当にお奨めです。 また比較的近年発売された
フジのプロビア400Xはカラーバランスがとても良く、これもお奨め品。青い部分が混じる星雲などには
E200より良好です。 増感時の粒子はE200より粗くなりますが対象によってはE200以上に
感じのよい絵が得られます。
デジタルからフィルムに
手を出す人はとても少ないはずですが、一度つかってみると、その独特な世界に魅了されるでしょう。
35ミリフィルムカメラは、中古で捨て値にて販売されていますので、マニュアル操作かつ機械式シャッター
のものを入手して試してみてください。 また、デジタル一眼を天文用に改造する費用よりもはるかに
安く試せますから、もっと積極的に試してみていいように思います。 カメラ本体も3000円くらいからあります。
ポジフィルムなんか使ったことない、、という方はなおさら感動があるかもしれません。
現像は普通の町のDPE店では処理できず、しかも中間手数料がばか高いので、直接処理できる
プロラボに持ち込みましょう。 一部のポジフィルムは増感現像といって、フィルム本来の
感度以上に引き上げて現像する処理を行えます。 たとえばISO200のフィルムを+1増感すれば
ISO400相当に、+2増感すれば800相当のフィルムで撮影したのと同等な感度になるのです。
もちろん粒子は荒れる傾向があるので、増感せずにすむならそれに越したことはないですが、
デジタルカメラと異なり、露出時間が長くなればなるほど感度がどんどん低下していく
フィルム独特の低照度相反則不規という現象が発生します。
暗い天体を撮影する場合には長時間露出だけではカバーしきれなくなる場合や、
1〜2時間などという長時間ガイドに機材が耐えられないかもしれません。
淡い天体だといくら露出しても写ってくれない場合もあります。
そうした場合には積極的に増感現像を行う事ができます。
プロラボは、関東圏にはまだ複数営業しているところがありますが、全国区で考えると
今なら 堀内カラー に出すのが仕事も速く、良心的な処理料金でおすすめです。
少し高くなりますが、近くに支店がなければ、ビックカメラでも堀内カラーの取次ぎ
サービスをやっていますので利用してもいいでしょう。 E200やプロビア400Xの場合には
E-6処理というものです。 処理価格はコチラ。
フィルムをスキャンできる、スキャナーをお持ちの方なら自分で取り込んで処理やプリントしても
いいですし、現像さえ終わっていれば、ポジでも近所のDPE店でスキャニングサービスを
してくれるところもありますので、それらを利用してデジタルデータにしたから、3の画像処理を
行います。 また、ポジ原版は、ライトビューワというライトボックス状のところにフィルムを置き
観賞用のルーペで長めると格別です。 画像処理しなくても原版のままなら光学フィルターで
対策しただけでもとても感じのいい絵を楽しむことができます。
Webにアップする目的などがあれば、是非フィルムの取り込みができるスキャナーを一つ
入手してください。 楽しいですよ。
色収差は、ある色域の光線は一点でピントを結ぶが、ある色域はピントが外れてしまうという事です。
ということは、あっていないピントの色域だけ別にして、モノクロで撮影した後に、再び合成すれば
すべての色域でジャスピンの、アポクロマート屈折と同等の効果が期待できます。
実際に3色合成撮影用のRGBフィルターでそれぞれピント位置を調整して撮影する事もできます。
が、擬似的でよければもっと手軽に同等の考え方を再現することができます。
カラーで撮影したものを、PhotoShop等の画像処理ソフトで開き、RGB毎のチャンネルで見てみます。
すると、個々の望遠鏡の特性にもよりますが、緑をピント位置とすると、赤や青がそこからズレて
いるようすを見ることができます。 天体写真は星雲部分以外は点像ですから、点がぼやけて
大きくなっています。 しかもハロが目立つのは星雲の部分ではなく、この点の部分だけです!
ということは、、、、この点を
ピント位置の星像と同じサイズに調整してやればハロが消えませんか?
星像だけ小さくする画像処理ができればやれてしまいます。
手順はPhotoShop等でピントのずれているRチャンネル、Bチャンネルをモノクロ画像として
元画像とは別に保存し、それらをステライメージで開きます。
ステライメージには「スターシャープフィルター」という、恒星像を
小さく見せるインチキくさい(笑:失礼っ)フィルターがありますので、それを盛大に用いて、ピント位置である
G(緑)チャンネルのモノクロ映像と星像のサイズが同じくらいになるようにして保存します。
例では厳密に星像のサイズを合わせていませんのでよくないのですが、ここを丁寧にやるのがいいです。
こうして色収差の原因となっていた、色域毎のピントのずれ(星像の肥大)を擬似的に小さくした後に
再び合流してRGBのカラー映像にすれば、色収差がとれる(目立たなく)なるはずです!
PhotoShopで開いている元画像といっしょに、スターシャープをかけたRとBチャンネルを開き、
PhotoShopでモノクロ表示されているRチャンネル、Bチャンネルそれぞれにそれを貼り付けてやります。
こうして補正したものを合成するとどうなるでしょうか、、、
恐ろしい効果です。 厳密に処理していない事もあり若干偽色が出ていますが、元絵と同じ望遠鏡で撮影したものとは
わからないでしょう。 つくづく画像処理はインチキくさいな、、と思います(笑)
なお、大事なのは、元絵でできるだけ色収差をとれるだけ物理的な光学フィルターでとっておく事です。
スターシャープフィルターも強くかけすぎるとものすごく不自然になるので、画像処理だけでなく併用する事を
お奨めします。
まとめますと、フリンジキラー等の光学フィルターで除去し、収差も効果に生かせるポジフィルムを使い、併せて
色分解&スターシャープフィルターによる画像処理が、現在いろいろ実験した中で最も良好な効果が得られています。
もちろん処理しにくくはなりますが、デジタル一眼レフでも上記の手法が使えますので、とりあえず試してみても
いいかもしれませんね。
高額なアポクロマート屈折は手がでないけど、小技の数々で短焦点アクロマートもこんな楽しみ方がある
というご紹介でした。 面白い結果が得られたら是非当HPの掲示板にアップしてくださいね。^^