機材の保守、調整をしっかり行い、末永くベストコンディションで使いましょう!^^
 お約束ですが、分解、改造等は自己責任でお願いします。


■ビクセン ポルタ経緯台 ガタが大きくなった時の対処法   (2009.6.11公開)


 初心者からマニアまで愛用者の多いポルタ経緯台。 長く使っている方、過積載の方(笑)、気軽に使える分
酷使に耐えている経緯台といえるかもしれません。 最近鏡筒が振るえるなぁ、、とか振動が収まらないとか
なんとなくシャキッとしない、という方への対処法をまとめてみました。

 原因はいくつもありますが、足回りを補強した上で、よほどの過積載でもなければ、回転部のアソビを
調整して少し堅めにしてやることで大幅にガタを取除くことができます。

  

 高度軸側の機構部分は化粧プレートで隠されています。
 とても強力な粘着テープでダイキャスト製の本体に貼り付けられており、しかも
 ぴったりとしたハメアイなので簡単には剥がせません。

  化粧プレートに確実に傷が付きます。 (透明の樹脂部が欠けたりします)
 がこのあたりは覚悟の上で。  あるいは金属側にミニルーターなどで最初から
 スキマを削っておいて尖ったもので起こせるようにしてもいいかもしれません。
 写真では最も単純に、先の尖った道具(千枚どおし等)を強引にスキマに
 押し込んでこじっています。 結構力をいれてグイグイとやらないと
 浮き上がりすらしませんが、遠慮せずに強引にやってください。
 怪我などされないようご注意を。


  

  難しいのは化粧プレートを外すところだけです。 外せば微動部分を固定している
 キャップボルト3本が見えますので緩めていけば微動部分を分離できます。
 この部分は高度軸、水平軸共通の構造となっています。


  

  微動ユニットの真中にナイロンロックナットがあります。
  ワッシャ−との間にはグリスが塗布されており粘りのある動きを
  ここで出しています。 真中のナットの締め具合で初期の硬さ(プリロード)
  が決まりますのでこのナットを絞めていきます。 緩まないようにロックナット
  になっていますが、ナイロンロックのものは一度緩めたりすると固定力が
  低下しますから、抜き取ってしまった場合にはネジロック剤などを併用するか
  薄いナットをダブルにしてロックしてもいいかもしれません。

   感触としては硬すぎるかな、、、というくらいの絞め具合で、くみ上げた時に
  ちょうどよくなります。 このあたりは言葉にするとやりすぎる方もいらっしゃるかも
  しれませんので、様子を見ながら各人加減してやってください。
  一度ナットを抜き取って、ネジロック剤を塗布した方はある程度ロック剤が
  固まるまで動かさないようにしてください。


  水平軸側は三脚を取り外し、三脚架台(三脚の付け根の部品)の裏側から
 見えているネジをひたすら外していけばあとは全く同じですから省略します。



  

  さてガタが出て今回増し締めしましたが、また緩むことが予想されますので次回に備えて
 整備しやすくしました。 高度軸側で化粧プレートが外れにくいのが困るので工具を
 差し込んでめくりやすいように金属部分にミゾを彫りました。 ミニルーターなどで削るか
 もっていなければ先の細いヤスリなどでも可能でしょう。 
  化粧プレートの樹脂が欠けてしまった場合にはプラリペアの透明などで補修すると
 それなりに綺麗になるでしょうか。


 このようにしてガタをツメたポルタ。 三脚部分の補強等とセットで実施すると購入時とは
 一味違うガッチリポルタに変身します。 ただしF値の大きい長大な屈折望遠鏡を
 搭載した場合などはレバー点が遠くになる事もあってどうしてもアームがしなってしまいます。
 ビクセンが10cm屈折をポルタにセットしてこないのは強度の限度を考えているのでしょう。
 過積載は禁物、、ということですので破損しないようご注意ください。

  参考までに、当方こうして補強したポルタにミザールカイザーを載せていますが、正直
 強度が足りません。 風がある日はブレて観測不能なほどです。
 ●コープタ●ンのF15屈折なども同様な状態になると思われます。 
 重量だけでなく、長いものは風の影響、振動の収まりにくさがありますので赤道儀への
 搭載や、HF経緯台のようなガッチリしたものへの搭載を考えなければならないかもしれません。

  と書いておりますが、軽量なポルタについ載せて使ってしまいます。
 いずれアームも補強してみようと思います。


■微動ハンドル部のガタが大きくなった時の調整方法(2011.10.13追加)

軸そのものではなく、微動ハンドルのアソビが大きくなりすぎても、振動を拾いやすくなったり、微動ハンドルを
動かしても空転する距離が大きくなり扱いにくくなります。 とくに高度軸でこのような症状になる方が多いのでは
ないかと思います。 調整に使う工具は3点。
1 5/32インチ アーレンキー(六角レンチ)
2 2mm アーレンキー(六角レンチ)
3 カニ目回し(例ではジャパンホビーツール社のレンジファインダーオープナー)


 3は持ってない人がほとんどだと思います。 古いカメラや光学機器を修理する人は持っている
 カニ目回し。 クラシックカメラを修理する人向けの道具などを扱っている、
 ジャパンホビーツール社からちょうどいいサイズのものが販売されています。
 S型とL型があり、私はS型のほうを使っています。
 L型でも使えます。 お求めはこちら。 


 調整に出して送料と合わせて考えると
 どちらが安いかな、、と思う方はビクセンさんに依頼してください。
 本来こういう作業はメーカーの熟練工がやってくれるものですから、あくまで趣味かつ
 自己責任で作業を楽しめる方向けの情報ですよ。もっとも、望遠鏡趣味を長くやるなら
 小さいカニ目回しは出番が結構あるので持っていて損はないです。 一部アイピースや
 双眼鏡の分解にも必須の小道具です。


作業は簡単です。 まず鏡筒ホルダーを外します。

  説明書に書いてあったかな、鏡筒ホルダーをとりつけるネジ穴は中にこんなにたくさんあいていて、
  好みの角度に付け直すことができます。 また中央の4つのネジ穴は、タカハシ社の各種
  鏡筒バンドやアリガタの取り付けネジの規格になっているので実はタカハシ製品とも互換性がある
  スグレモノです。


次に微動軸の側面にある2つの止めネジをゆるめます。(片側ずつ調整するなら片方で)



  微動軸の周りを良く見てください。 穴の中央が偏った金具で軸が固定されています。
  このエキセントリックカラー(偏心留め環)を回転させることで、微動軸の中心と
  内部歯車(ウォームホイル)との距離を調整できるようになっています。 
  また、これが前後二箇所にあるので、厳密調整したい場合にも対応できるようになっていて
  よく考えられた設計です。 

  ウォームホイルの歯筋に対して平行に当たるのが正しい歯アタリですから、
  前後のエキセントリックカラーが別々の方向を向いているならば
  微動軸(ウォームシャフト)は斜めアタリになってしまいます。 ご注意ください。


 時々微動ハンドルを差し込んで回してみれば、ガタが目的どおりに調整できたか確認できます。
 親切なことに微動ハンドルは前後に差し替えできますから、前、後ろそれぞれを調整しながら
 様子をみて好みの調整を出していきます。 ガタがうまくとれたら、最初にゆるめた止めネジを
 閉めて、エキセントリックカラーが動かないよう固定して完成。

 

 とくに惑星などを毎日のように観察するユーザーには使い心地が劇的に改善される調整かと思います。
 是非お試しください。



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