■天体観察をはじめる前に
火星が大接近、○○座流星群、○○彗星、日食、月食、時折新聞やニュースを賑わせる天体現象を見たとき、
私も天体望遠鏡が欲しい、そう思う方もいらっしゃるでしょう。
あるいはなんらかの映画やドラマで取り上げられた「天体観測」がとても魅力的に感じたのかもしれません。
思い立った理由が何であっても、本当の星を見てみたいと思ったことは大切な一歩目であることに変わりありません。
もしその先に広がる宇宙を見て心打たれるならば、それは人の考え方にとても大きな影響を与えることでしょう。
例えば、人間の小ささを感じたり、地球がいかに貴重な存在なのかを自分で気づくならば、もっと世の中平和に
なるやもしれません。 ただ、最初の一歩が、その先にあるすばらしい世界に続くか、あるいは垣間見ること無く
元の世界に戻ってしまうかの大きな分かれ目になることが少なくないと感じています。
ところで、「天体観測」どこからはじめますか? 「観測」という言葉を使うと、継続的に対象のデータを採取し、
そこから何らかの結論を導き出す、という学術的な要素が少なからず出てきます。 これは大変根気のいる作業です。
しかし、ここを訪れた殆どの方は、そこまで考えるのではなく、純粋に綺麗な星が見たい、という気持ちではないでしょうか。
それもまた大変有意義な事です。 そこで、当HPでは「天体観測」という言葉ではなく、「天体観察」という表現を用い
自分の目で確かめる事、感じる事を意識しています。 本に載っているような綺麗な星雲って本当にあるのでしょうか?
あんなものが本当に見えるのでしょうか? ひょっとしたらウソかもしれませんよ(笑) ぜひご自分の目で。
天体観察をしようと思い立った場合、殆どの方がまずは天体望遠鏡を買わねば! と考えるようです。
そしてネット通販、オークションで格安の望遠鏡を手に入れワクワクしながら夜空に望遠鏡を向けるわけです。
ですが残念なことに、「すぐに飽きてしまった」 ですとか 「思ったほどじゃなかったな」という感想をかなりの率で
耳にします。 もし、
星の探し方、見方、道具の選び方を、あと少し知っていたならば、
星への興味を失っていなかったかもしれせん。
インターネットを検索すれば、それこそ大量な情報が入手できます。 巨大掲示板で尋ねる方もいらっしゃるでしょう。
ですがこうした趣味性の高い世界では、各々が持つこだわりを強く押し付けられてしまう場合や、間違ってはいないでしょうが
尋ねた方にとって最適なアドバイスでなくても、そう思い込んでしまう場合等、弊害も見逃せません。
自由な考え方があったのに、その機会を失ってしまうのは大変残念なことです。
いきなり「答え」をインスタントに求めようとするときに考えるという行為は省略されます。
そこで、「どういう事を知っていれば自分で判断できるのか」を知る必要あります。
旧来の天文関連の入門書はその為の良い情報源となってくれます。
是非、望遠鏡を買う前に、ネットの掲示板で質問する前に、客観的に書かれた入門書をいくつかお読みになり
もらったアドバイスが自分に合っているのかどうかご自身で判断できるようになってください。
以下に、現在入手できるであろう入門書のいくつかをご紹介いたします。
取り掛かりに良い入門書というものは意外に少ないと感じます。
少々知識がある方を対象にしていたり、逆に内容が薄すぎたりと、必要知識をうまく網羅している本を探すのには苦労します。
以下に紹介させて頂くものは、当方が実際に入手し、はじめての方にお薦めできるだろうと感じたものです。
各地の科学館、天文台発行の啓蒙書には良書が多いですのでそれらも紹介しています。
売店で販売されていますが遠隔地の方など、事情をお話してお願いすれば対応してくれる場合もあるかもしれません。
「はじめてのスターウオッチング 天体観察入門」
浅田英夫&アストロアーツ 著
「新訂 初歩の天体観測」
平沢 康男 著
「はじめての天体観察」
名古屋市科学館 編 名古屋市科学館振興協会 発行
http://www.ncsm.city.nagoya.jp/index.htm
名古屋市科学館のミュージアムショップで頒布している啓蒙書です。
50p程の薄手の小冊子ですが、天体望遠鏡の基本的な話の他に
もっとも身近な天体である太陽、月、そして流星という主に3点に絞って
説明している。 挿絵は地元の方なら懐かしい山田卓氏による。
PL法の影響で、天体望遠鏡を購入しても危険が伴う太陽観測用の装備は
付属しなくなってしまった。 しかし昼間に観察でき、毎日続けることで「観測」にも
繋がる良い観察対象であることには間違いない。 後述の「楽しい天体観測」と合わせて
名古屋市科学館を訪れたら、売店にてお求めください。
「楽しい天体観測」
名古屋市科学館 編 名古屋市科学館振興協会 発行
http://www.ncsm.city.nagoya.jp/index.htm
同じく名古屋氏科学館ミュージアムショップで頒布している小冊子。
こちらはタイトルが「観測」となっているが、むしろ「観察」や「観望」というニュアンスが近いかも。
星雲・星団を楽しむ際に、双眼鏡が使える道具であることを最初に示す点は良いと思う。
初めての人でも割と場所を特定しやすい、イラスト的星図で、主だった星雲・星団を紹介。
天の川が肉眼で見えるほどの星空なら双眼鏡で見つけられるはずです。
他に市街地でも観察可能な重星、惑星についての見方が割と詳しくかかれている。
同好会の同人誌的雰囲気ながら、科学館扱いだけあってツボは押さえている。
前述の「はじめての天体観察」と合わせてお求めください。 2冊でうまく補完します。
「学習用星図」
明石市天文科学館 発行
http://www.am12.akashi.hyogo.jp/
明石市天文科学館のミュージアムショップで頒布している、学習用の簡易星図。
5等星までしか記載されていないので、街中〜少し郊外で見える星の様子とかけ離れておらず、
初めて星座や季節の星の位置を覚えようという方には抜群の威力を発揮します。
かねてより思っていたのですが、初心者というと星座早見盤をすぐに引き合いにだしますが、私は
むしろこういう簡素な星図とセットで用いるべきだと考えます。 星図は地図、星座早見は方位磁針のような
役割です。 ちょうどそのような説明がなされていてまったく同感であると関心しました。
天体観察に、天体望遠鏡以上に必須の道具である星図がなぜか入手しにくいのが残念です。
初めての方、星座早見だけでなく、この星図は是非とも入手して頂きたいです。
<番外編>
ビクセン「天体望遠鏡で楽しむ 星空ガイドブック」
「天体望遠鏡ガイドブック」
ビクセン発行。 同社の天体望遠鏡セットを購入すると付属しているガイドブック。
最近のものは左のカラー刷りのものになったが、昔の二色刷り(左)のもののほうが内容が
明瞭で観測的要素のツボもキッチリ押さえており、濃かった。
旧ガイドブックのほうは単品売りしていたら買ってもいいほどの内容だと感じる。
とはいえ、付属品としてはいずれも出来すぎなほどの小冊子です。
ただし、望遠鏡を購入した方が手にするものなので、望遠鏡選びについては触れられていない。
もし中古等で2色刷りのものが添付されていたら大事にして欲しい。
旧ガイドブックの一部。 大変為になる内容が満載である。