■街中からはじめる天体観察

( 街中なら街中でできる天体で楽しむ)

  私が手を染め始めた頃の気持ちを思い出して書いてみます。 今は当たり前と思っていることも
  そういえばこんなこと知っていたらきっと良かったのに、、ということを軸に書いてみたいと思います。
  プロではありませんので間違いもあるかと思いますがお役に立てる面があれば幸いです。


1 街明かりに紛れていても光っている星

 月の出ていない晴れた夜、空を見上げてみてください。 沢山星が見えますか? 
数えるほどしか見えない、、、、という方も少なくないと思います。 別段都会ではないとしても
今の日本ではかなり郊外まで足を伸ばさなければ「星空」というイメージにかなう環境ではありません。
これはビルのネオンサイン、街灯、車のヘッドライト等、地上から空に漏れ出す無駄な光が空気中のチリや
水蒸気に当たり、光が拡散して起こる「光害」が主な原因です。 

下の写真のように誰も見ていない空へ光を照射している愚の骨頂とも云えるような照明も目立ちます。 
 (この看板照明、あろうことか環境を謳う某大企業の看板を照らしていました。苦笑いするほかありません) 

 ただ天文学者や天文ファンが困るからというよりも、無駄なところに光を捨てていることが罪深い
といえるでしょう。 文化的な生活、安全な生活を守るために夜の明かりは必要なものです。
 ですが誰も見ていないところに光を捨てるのはエネルギーの無駄遣いにしかなりません。 
私の住んでいる街では、自治体の照明を中心に、街灯にカサをつけたりして
光が効果的に地面を照らすようにすることで、何分の一かの電力で
前以上に地面を明るく照らす事が出来る
「光害対策灯」への交換が進んでいます。 
 おそるべき金額の電気代が節約される為、税金も守られ、街は明るく夜空は暗く、なにより
地球温暖化を加速させるエネルギーを無駄に捨てない。 といいことだらけではありませんか。

  ■光害について(環境省)

この趣味の良いところの一つを挙げるとすれば、環境に目を向けるようになることです。
 きっとそれまであたりまえだと思っていた事が実はかなりおかしなことになりつつある、
という事をより感じるようになるはずです。 そして星空を含め、本当に自然が
好きになったという方も多くいらっしゃいます。 好きじゃないものは大切にできませんよね。



 そんな光害まみれの街中でも、別に星が光らなくなったわけではなく、光っているのですが街明かりに照らされた
明るい背景の空に埋もれて見えにくくなっているだけなのです。 
明るい太陽の下で電球が光っているかいないか分からなかったという経験はありませんか? それと似ています。  
しかし、もし明るい太陽の下でも電球が十分強い光を出している場合には問題なく光っていることが分かるものです。 
街中にある信号機のランプなどかなり明るいので昼間でも光っていることが分かりますね。

 ということは強く光る星は、街明かりで空が明るくなっても埋もれず目で見えることになります。
そういう星こそ、実は街中での格好の観察対象となります。 上の写真でも月、金星ははっきり
見えますね。


2 街中ならばまず、月や惑星を楽しもう

 街中で見える数少ない星の中には大抵、惑星が入っています。 「惑星」というのは他の星と違い、自分で光らない
 太陽の光を反射して光っている私達の住む太陽系の仲間の星です。 距離が比較的近いこともあって見かけの大きさが
 他の星よりも格段に大きく、そして明るく光って見えます。  
 惑星以外の普通の星は「恒星」と呼び、自分の力で光っている太陽のような星です。私達の知っている太陽も
 この恒星の一つです。 

  恒星は惑星に比べてものすごく遠くにあるので望遠鏡でどんなに拡大しても点にしか見えません。 
 望遠鏡を買ったばかりの方が適当な星に筒先を向けてみても目で見たときと同じただの点にしか見えず、ガッカリした、、
 という声をよく耳にします。
 でも惑星はちがいます。 拡大すれば点ではなくて、ちゃんと形や模様が分かる見て興味をそそる星です。
 しかもこうした惑星ほど街中で良くみえるとなれば、これは最初に楽しむ対象としてまったく好都合ではありませんか。

 また月はどんなに都会でも肉眼で楽に発見できる天体です。 望遠鏡を購入して真っ先に月を見るという方も
 多いのではないでしょうか。 月も毎日欠け方が変化しますから一度みて飽きるというものではなく、
 見方を知っていれば末永く楽しめる観察対象です。

  そうです。街中ではまず月や惑星を楽しんでしまいましょう! 天体観測のベテランも惑星を観測するには街中のほうが
 コンディションが良いというくらいですから、私達アマチュアもそれに倣うとしましょう。



3 惑星ってどれ?(惑星の見つけ方)

 望遠鏡で覗いて形や模様が見える星、、これは是非見たいと思われることでしょう。
 しかしいったいどの星が「惑星」なのでしょうか?

  月は目ですぐ位置が分かりますから探すまでもありませんが、惑星はそうもいきません。
 季節や時間帯によって、その時見える惑星は入れ替わりますし位置も変化しますので、
 惑星の位置は星図や星座早見盤には載っていません。 

  
今のシーズンに観察可能な惑星がどの時間にどのあたりに見えているかは
 天文雑誌を見れば書かれています。 大きめの書店やインターネットで「星ナビ」「天文ガイド」という雑誌を
 探してください。 (初めての方には「星ナビ」の方がとっつきやすいかもしれません。 )
  それらの雑誌には、今月の星空といったタイトルで惑星等の位置が分かりやすい図解で説明されています。

  また、近くに季節毎の星空案内をしてくれるプラネタリウムがあったら、
 
そこでは今晩見える惑星を説明してくれるはずです。 探し方も解説される場合が多いですから是非活用してください。
 よく分からなかったら、投影終了後に解説員の方の事情が許すようでしたら近づいて、尋ねてみればさらにしっかり
 教えてくれるにちがいありません。 (私も幼少の頃、よく詰め寄ったクチです(苦笑)。あの時の老齢の解説員の方ありがとう)

  惑星は大抵、南の空半ばほどを毎日少しずつ移動していきます(季節により高さは変わります)から、プラネタリウムの
 席は北側で視聴すると具合が良いでしょう。 目の前が南の空になるようにすれば、自宅にもどったときの南側の夜空
 ですぐにプラネタリウムで教えてもらった星を見つけられるはずです。 年に何度か通えば、もう雑誌を見なくても
 プラネタリウムで説明してもらわなくても空を見上げただけですぐに惑星がどれか分かるようになっていることでしょう。
 惑星は他の星と異なり、瞬かずにじっと光っているので光り方がなにか違うな? と、しばらく観察すればお気づきになるに
 違いありません. 

 ところで入門書を見ると、天体観察の常識の色々が述べられています。 星を観察する時の基本は、

    1 月の出ていない夜が良い
    2 街明かりのない郊外が良い
    3 暗闇に15分以上目を慣らすこと

 いずれも大切な事です。 しかし月や惑星にはこの鉄則は必要ありません。
 月が出ていませんと月は観察できませんし、まぶしい月を眺めたら目が暗闇に慣れるも慣れないもありませんね。
 月明かりの夜でも惑星はちゃんと肉眼で確認できるほど明るいので心配無用です。
 天文趣味にドップリな方は、月明かりのない新月期(月が細い時期です)には車に機材を詰め込み山奥へ出動し
 (山奥で何を見ているかは別の記事でご紹介します。月や惑星以外が多いです)、月がまばゆい満月期には街中の
 自宅でビール片手に月や惑星を観察しているなんて人も少なくありません。



4 月面観察

 まずは月から参りましょう。 月を観察するのは三日月〜半月くらいが一番綺麗に見えます。
 満月はクレーターの凸凹が見えにくくのっぺりとして面白くありませんので満月は慣れてからにしましょう。
 最初にみる天体にはサプライズが必要です!^^
 
 
すでに望遠鏡を購入されていましたら、まずは一番低倍率になるような接眼レンズを選び
 月に望遠鏡を向けてください。 ファインダーは入門書や説明書に従って昼間に遠くのビルや鉄柱で合わせてありますね?
 であればファインダーの十字線(「レチクル」と呼びます)の真中に月が来るように望遠鏡を操作してやれば、望遠鏡本体でも
 真中に捉えられているはずです。 最初なれるまではなかなか向けたいところに望遠鏡が向いてくれない!と悩む方も
 多いようですが、上下左右が逆になる天体望遠鏡特有の面に慣れるまではちょっと大変かもしれません。
 ですがちょっとしたコツを知っていると驚くほど簡単に望遠鏡を目標に向けることができるようになりますよ。
 ベテランの方からすれば当たり前の事ですが、意外に入門書にも説明書にも書かれていないのでここでご紹介しちゃいます。
 コツは
  ファインダーを覗くとき両目を使うこと
 です。 え?片目を閉じて、片一方の目でファインダーを覗くんじゃないんですか?と言われたことがありますが、閉じないで
 両目を使います。 ファインダーを覗いていない肉眼のほうの目で星空を見ます。 これから入れたい星をその目で見ながら
 反対側のファインダーを覗いている目線が肉眼の見ているところと重なるような気持ちで操作すると、あら不思議
 片方は肉眼、片方はファインダーなのに両目で1個の星が見えるようにどんどん近寄っていきます。
 それがピタリと重なったときには十字線(レチクル)の真中に星が自然に乗っかっているはずです。

  左右の目の視差をうまく使えるようになると星をファインダ−の真中に入れる作業が物凄く楽に、すばやく出来るようになりますよ。 
 練習してみてください。(このように星を望遠鏡に捉える作業を「導入」と呼びます)

 さて、月が望遠鏡の視野に入りました。 ピントを合わせてみますと、もしあなたがお求めの望遠鏡がマトモな製品であったなら
 「うわ!!なんじゃこりゃ!!」と感動の月面が待っているはずです。 デコボコとしたクレ−ターが大変美しく、見入ってしまうでしょう。
 あなたの望遠鏡の性能が許す範囲で倍率を上げてみましょう。  さらなる迫力で、もし口径が20cmもあったなら宇宙船の窓から
 月を眺めているかのような気持ちよさです。 しかし倍率を上げていくとなにやらユラユラと湯気の中のような見え方になりませんか?
 これは地球の大気が悪さをしているせいです。 暖かい空気と冷たい空気が上空で混ざり合うときに、光の屈折率が変化するために
 ゆらめいてしまいます。 この様子を「シーイング」と呼びます。 ゆらめきが酷いときは「シーイングが悪い」とか、あまりゆらぎが
 無いときには「今夜はシーイングがいいね」などと言います。 月や惑星のように高倍率で観察する場合にはこのシーイングの良し悪しが
 見え方に大きく影響を与えるので是非意識してください。 一般的に冬場はシーイングが悪く、夏場はシーイングが良くなる傾向があります。
 また、街中では昼夜の温度差が郊外よりも少なくなる為か、郊外よりもはるかにシーイングは安定する傾向にあり、月や惑星の観察には
 実は街中は好適地なのです。 都会の科学館に巨大な望遠鏡があるのもそのような理由から、あえて惑星を狙っての設置だったりする
 という話もあるほどですよ。

   微動ハンドルが付いていれば微動させながら月の上をあちこち移動しながら楽しんでください。 クレーターあり、山あり、谷あり
 色の黒いところ、白っぽいところ等かなり変化に富んでいます。 それぞれの地形には名前がつけられており、それを確認しながら
 観察するのは月面観察の第一歩です。 是非簡単でも良いので月面図を入手してください。
  入門書やガイドブック、ものによっては望遠鏡の説明書にも書いてあるかもしれません。 インターネットで月面図を検索すれば
 簡単なものは入手できるでしょうからそれを印刷して確認した場所にしるしをつけていきますと、ただぼんやり見るだけよりも
 ずっと詳細に観察する目を養うことができて楽しさも倍増することでしょう。
 たかが月とバカにするなかれ、天体写真に足を踏み入れても、人によっては「月に始まり、月に終わる」などと語る大ベテランも
 少なくないのです。 月面図もものすごく詳細な一冊の本になった立派なものもありますから、簡単な月面図で一巡したら
 そのような詳細な月面図で、さらに倍率を上げてじっくり観察するのも悪くありませんね。

  しかし月を眺めていてまぶしくありませんでしたか? 口径が大きくなるほど、月が太い時期ほどまぶしく、目が辛くなってきます。
 そこで「ムーングラス」や「NDフィルター」を使います。 これは着色ガラスになっていて、アイピースにねじ込んで光を減らす小物です。
 付属品に付いてるかもしれません。 もし付属していなかったら、ムーングラスではなくNDフィルターをオススメします。
 ムーングラスは緑色っぽい色になってしまうのですが、NDフィルターはニュートラルグレーで、色はそのままで明るさだけ減らしてくれる
 ので月の色合いを楽しみたい向きにはこちらのほうが好都合です。 月面観察にはNDフィルターがオススメです。
 ミードや笠井トレーディングにて販売しています。 価格は1000円台〜2000円台です。 是非一つ持っていてください。


5 惑星

 月を存分に楽しんだら、次はいよいよ惑星を観察しましょう。 
 ビギナーでも観察しやすい対象は、土星、木星、火星、金星の4つです。


  惑星がどの星かは肉眼で見つけておいてください。
 月と同じ方法で、お目当ての惑星を導入します。 同じく、まずは低倍率から。 
 決して写真のように大きくは見えません。 しかしちぃさーーーーーーーくではありますが、色や模様、土星なら輪っか、
 木星なら寄り添うように並ぶガリレオ衛星が見えるはずです。 本当に小さくささやかな絵にしか見えないはずですが
 多くの方は自分の目で見る生の惑星の姿に感動されます。 やはりどんなに小さくても実際に見たものに勝る力は
 ないのでしょうね。 私も幼少のおり、初めて土星の輪を見たとき、家の中にいる親を呼びにいきましたっけ。

  もしその季節に土星が見られるのであれば、
 最初にみる惑星は是非土星にしてください!
 

 最初にみる惑星にはインパクトが必要です。 もし土星がシーズンオフでしたら第二候補は木星です。
  そしてもしお子さんに天体望遠鏡を買い与えた親御さんでしたら、
 決して親が導入してしまわないように気をつけてください。 
 お子さん自身の手で、どれだけ時間がかかってもいいので自力で導入してもらってください。 
 苦労してやっと見つけたそのときの感動はこの先の天文ライフに物凄く大きな意味を持ちます。

 なにやら精神論っぽい事を書いてしまいましたが、本当に同じような感想をお持ちになる現役天文ファンや
 プロの天文学者も少なくありませんからおそらくここでご紹介してよかった事だと思います。
 さて、実際の観察に話を戻しましょう。 主だった惑星を当方が街中の自宅で撮影した写真を交えまして
 見所などご紹介します。


 <土星>
  なんといっても見所は輪です。 20cmクラスになるとかなり楽に二重になっている輪の様子や
  (溝の部分をカッシーニの隙間などと呼びます)本体の縞模様も観察できます。
  おおよそ30〜40倍あたりからものすごーーく小さいながらも輪があることがわかるようになります。
  天体望遠鏡でなくても、地上観察用の望遠鏡でも輪が見えるものが結構ありますので試してみてください。
  夜空ではやや黄色がかった星として見つけることができます。

  
  土星(2007.5.14 VC200LとWebカメラにて撮影>



 <木星>

  太陽系一の巨大惑星です。 望遠鏡で見たとき一番大きく見える惑星で、8cmクラスでも2本くらいは縞がはいった
  様子や、横一列に近くに並ぶ4つのガリレオ衛星の位置の変化を観察するのも良いものです。
  20cmクラスになるとかなり詳細な模様を観察することもできますし、日によって模様の位置が木星の自転により
  変化しますから変わった顔を観察することができます。 目玉のような大赤班も見所の一つです。
  出ている時期ならば、夜空でかなり明るく目立つ星として登場してきます。

  
  木星(2007/6/19 VC200LとWebカメラにて撮影)


 <金星>

  明けの明星、あるいは宵の明星として夜空でひときわ明るく輝く地球より内側を
  回る惑星。 内惑星は月のように満ち欠けするのでその様子を観察すると面白い。
  下の写真は半月ならぬ、半金である。

   
  金星 (2007/6/4撮影 VC200LとToUCam)

  
    このように時期によっては欠けが大きくなったり太くなったりする。
  比較的短期間で変化が見えるので毎日観察するのに良い対象です。



 <火星>

  地球のすぐ外側を回る惑星。 他の惑星に比べて楕円の軌道となっている為、
 距離が激しく変化する。 遠い位置にあるときは模様など見えないただのオレンジ色の
 点にしか見えませんが、2年2ヶ月毎に接近するのでその際に観察好機です。
 ただ接近時もものすごく近くなる大接近から、あまり近くない小接近まで、その幅は
 かなり広いです。 ちょうどこの記事を書いている2008年1月は中接近で結構楽しめます。
 次回は何年も先にならないとあまり大きく見えません。  模様は全体的に淡くかすんだように
 なっており、覗きなれてくると写真のように見える日があります。 火星も火星図なるものが
 ありますのでそれを片手に観察すると面白いです。 また火星が接近時には決まって
 天文雑誌で特集記事が組まれますから是非参考になさってください。
 夜空では不気味なほど赤い星として見つけることができます。

  
  金星(2007/12/26撮影 R200SSとWebカメラで撮影)



<水星、他>

 水星はものすごく地平線ギリギリの位置に朝方か夕方の薄明るい時間に極短時間しか観察できず、
 天王星、海王星は見つけるだけで一苦労のはずです。(初心者は自動導入でもなければおそらく無理でしょう)
 水星は日の出や日没近い時間に地平線より出来るだけ高く上る「最大離角」と呼ばれる時期に
 東、あるいは西の地平線ができるだけ開けた場所で日没、あるいは日の出直後に探すのがコツです。
 いつが最大離角なのかは、天文雑誌や天文年鑑で調べて挑戦します。
 あまりに低い位置なので街中では場所探しが大変です。 高いビルの上や開けた屋上があれば
 絶好の観察場所です。 背景が明るい時間帯なので肉眼で発見できない場合には
 双眼鏡の助けを借りると明るい中にチリッと輝く水星が低い位置にいるのが分かります。

水星(2007/6/4 最大離角に近く比較的高く昇った。VC200Lとコンパクトデジカメにて撮影)



 なお、これまでに紹介した惑星の写真はかなり大きく引き伸ばされたもので、
 アイピースを覗いてもこれほど大きく見えるわけではありません。
 とても、とてーーーも小さい丸のなかに、ちぃさーーーく模様や輪があるだけですが
 覗きなれてくるとかなり見ごたえがあります。 本や写真の大きさに惑わされませんようご注意ください。

 いずれの惑星もそうですが、惑星の観察は特に、なるべく空の高い位置に
 来る時間帯を狙うようにしますとシーイングの影響を少なくすることができます。 分厚い大気の壁を通るか、
 大気の厚みの薄いところを通るかの違いになりますから、その理由はご理解頂けることと思います。
 もしお手持ちの望遠鏡が反射式、あるいはカセグレン式だった場合、外に出して直ぐに観察しても
 いまいちモヤモヤしてはっきり見えないことが多いです。 これは筒の中の空気と、外気がなじまない為
 中で空気が対流して筒の中でシーイングが悪くなっているような状態です。 またミラーそのものも
 温まっていたりしますと暖気が上がったり熱による変形も加わり性能を発揮できないことがあります。

 反射系の望遠鏡は観察前30分〜1時間は外に出して温度になじませるようにしてください。
 
 なんだ、そんな面倒なら屈折にしとけばよかった、、そう思われますか? いやいや大丈夫。
 惑星のようなターゲットには、中央部があらゆる光学系の中でもっともシャープな像が得られる
 ニュートン式は強い味方です。 それだけの時間待つだけの価値は十分あると私は感じております。
 屈折の場合にはすぐに観察を開始できますから、仕事で忙しいサラリーマンのお仲間の方や、
 面倒が嫌いだという方には屈折がいいでしょうか。 ただ惑星は口径が大きいほど見え方が
 すばらしくなりますので、もし面倒が苦にならない方なら是非口径を取って、反射式を狙ってみて
 ください。 そのような方ならばミラーのメンテナンスも苦にならないでしょう。 
  私は巷で言われるほど反射式はミラーの手入れや調整が必要なので初心者に向かないとは
 思いません。 どちらかというと、その人の性格にあっているかどうか、、、だと思えるのですが。
 (余談ですが、ビクセンの反射は驚くほど光軸が狂いませんし、手入れもかなり安価にメーカーで
  やってくれますからオススメです)

 土星は口径が8cm以上になると、シーイングがよければリングが二重になっているのを確認できるでしょう。
 木星はよりそう4つのガリレオ衛星が見えるはずです。 日によってその位置がどんどん変化するので
 その観察もオススメです。 裏側にいっていて4つ全てが見えない日もあります。 口径が20cmにもなると
 シーイングがよくてこちらを向いていれば、木星の目玉ともいえる「大赤斑」が見えますよ。

  火星はなかなか模様が見づらい対象です。 覗きなれればなれるほど模様が見えてきます。
 最初はなにか黒っぽいシミのようなものがあるかな?くらいの淡い物にしか見えませんが
 覗きなれてくるとかなり詳細な部分まで判別できるようになります。

  そうです。惑星観察に大切なのは 覗き慣れることです。

 見てすぐにやめてしまうのではなく、しばらくジッとみるクセをつけて何日か継続してみてください。
 同じ時でも、しばらく見ているとユラユラしていたものがフッと一瞬物凄く細かいところまで見える
 瞬間があります。 シーイングは絶えず変化していますから、それが安定する瞬間があります。
 この時に見える惑星像は格別です。 その一瞬一瞬を逃さないようになってくるとかなり
 見ごたえが出てきますよ。


6 重星

 肉眼で見ると一つの星にしか見えなくても、望遠鏡を使うと実は2つ以上の星が集まっている というものがあります。
 これを「重星」と呼びます。 実際に2つの星が近くにある「連星」であったり、実際には物凄く遠くにある星同士なのですが、
 地球から見てたまたま同じところに重なって見えている見かけ上の重星もあります。
  重星の観察は月の出ていない夜に行います。 月明かりがあると探すのが大変になります。
 いずれにしましても、これらは星図の上で特別のマークで重星であることが分かるように記載されていたり、ガイドブックで
 観察して面白い重星が紹介されていたりします。

  例えば夏の星座である「はくちょう座」のくちばしの星である「アルビレオ」は人気のある二重星です。
 それぞれの星が赤と青の違った色に輝き、その対比が人によっては大変美しく感じられるものです。
 (月や惑星よりマニアックな対象ですので、「美しい」と感じられるかどうかはその方のキャリアとも関係がありますし
  美的感覚も人それぞれですので一概には言えませんが、確かに興味深いものです)
 
 また、こと座にある「ダブルダブルスター」も面白い重星です。 低倍率だと「ん?2個か、、」
 ですが倍率をあげるとそれぞれがまた2個ずつの重星になった、重星の重星です。

 オリオン座の三ツ星から下に縦並びになっている小三ツ星の真中あたりを低倍率で観察すると
 なにやらぼんやりと光っているものがありませんか? よくわからなかったらそらし目で見てください。
 もしそこにぼんやりと何か光るようなものが確認できたら、それは「オリオン大星雲」です。
 これは街中でもなんとなく見えるほど明るい星雲ですが、その真中に星があります。
 倍率を上げていくと、、、、なんと4つの星が集まっている4重星です。 これは「トラペジウム」と呼ばれる
 生まれたばかりの星です。 その星が回りのガスを光らせているのです。

 他にも数多くの重星がありますから星図を片手に探して観察してみるのは如何でしょうか。


7 散開星団

 街中でも明るい散開星団なら楽しめます。 ファインダーが7X50の大きめのものであれば結構多くの散開星団が
 探し出せるはずです。 秋〜冬であれば、すばる星と呼ばれるM45プレアデス星団や、かに座のプレセペ星団などは
 割と見つけやすく、低倍率で美しい散開星団です。 いずれも双眼鏡で観察したほうが美しいほどです。
  重星と同じく、散開星団も月の出ていない夜に行います。 月明かりがあると探すのが大変になります。

  星図やガイドブックを見るとかなりの数の散開星団が夜空に輝いていますが、街中で観察しやすい対象は
 限られてくるかもしれません。  その代わり見つけ出したときのヨロコビはひとしおです。 
 まずは双眼鏡を使って大体の位置を確認して、それから望遠鏡をそこに向けるというような方法ですと
 ぐっと見つけやすくなります。 逆に双眼鏡で捉えられない場合には、その環境では観察(導入)が困難な対象である
 ともいえるでしょう。 このように双眼鏡は望遠鏡のいい補助機材にもなりますし、双眼鏡自体でもかなり楽しめる
 優秀な観察機材となります。 よく望遠鏡か、双眼鏡か?と議論している場を見ることがありますが、比較するものではなく
 用途が異なり、それぞれを補い合う良い関係です。 どちらか、、ではなく、できればいずれ両方お持ちになることを強く
 オススメします。
 どうしてもギブアップの場合、街中では自動導入が助けになってくれます。  最初は積極的に
 オススメしたくないハイテク機材なのですが、あまりに見つけられずに嫌気が差してしまうほどでは逆効果ですので
 どうしても見つからない、、、という場合には検討されてもよいかと思います。 例えばビクセンの製品であれば
 筒だけ取り外して台を交換したり、その逆も可能ですから、最初ポルタ経緯台で手動での導入を楽しみ、
 途中で自動導入付きのGP-SBSやSX赤道儀、スカイポッドを買い足すのもいいかもしれません。


以上、街中でも結構沢山観察できる対象が隠れていることを知って頂けましたでしょうか。
 重星、散開星団は、月や惑星に比べて難易度が上がりますから、一つずつクリアーしていく楽しみもあるでしょう。
 簡単な順に並べてご紹介致しました。 特に車を持たないお子さんや学生さん、事情があって郊外へ星を見に行くことも
 ままならない方も諦めることはありません。 まずは街中で楽しめるターゲットを、まったりと観察して星に親しんでください!



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