機材の保守、調整をしっかり行い、末永くベストコンディションで使いましょう!^^
お約束ですが、分解、改造等は自己責任でお願いします。
■ビクセン MC90L ミラーシフト防止&ガイド鏡仕様への改造
(2009.4.20公開)
コンパクトで軽量ながら長い焦点距離が得られる為MC90Lをガイド鏡として
手にいれた方も多いことと思います。 小さいため風の影響もうけにくく、サイドに
はじめから丈夫なアリガタレールがついているので、タカハシのガイドマウント
TGM-2にLAアリミゾをつければジャストフィットです。
さてそんな使えそうなMC90Lも流れて旨くいかん!という方や
主にVC200Lのような長焦点で具合がよろしくない、という方へのご紹介です。
暖かくなってくるとグリスが柔らかくなる為か、ミラーシフトが目立つようになります。
主鏡を移動させて合焦するタイプでは少なからずミラーシフト(ミラーが横ずれして星が動いてしまう)
が発生しますが、これをガイド鏡に使うと、、、、、
向きが変わってミラーが落ち着くまで流れとして悪さをするという訳です。
そこでシュミカセなどではミラーロックを追加改造したり、最初から
ミラーロックがついているものもあります。
MC90Lもガイド鏡として使う時、ミラーはロックしてやりたいところです。
どのみちガイド鏡にしか殆ど使わないというのであればガイド鏡仕様に絞り込んだいじり方でも、、
ということで今回の小技のご紹介。
眼視用途としても使う方は幾分弊害がある面も含まれますのでご了承下さい。
まずは以前のMC90L分解記事を参考にして分解を進めてください。
今回はその応用編。
■MC90L エニョール式シフトロック(笑)
「富田式シフトロック」が有名ですが、その名前にちなんだ冗談です。^^;
そんな大袈裟なものではありません。 今回はただ調整するだけです。
分解手順にしたがってあけていくと、フォーカスノブを外せば下の写真(下段)のようにフォーカスシャフトが
露出しているはずです。 その根元をよく観察してみてください。 偏芯した穴のあいたリングネジが
シャフトを本体側のスリーブに押し付けています。 仮にこれを「合焦シャフト与圧ネジリング」と呼ぶ事にします。
ということは、、、合焦シャフト与圧ネジリングを増し絞めすればガタを抑えられるはずです。
この部分のガタの確認方法は以下の通り。
主鏡はバッフルをいわばレールとして前後に移動しますが、抜け止めとして
バッフルに一箇所ネジがありますのでそれを外してやればどこまでも前に出てきて、、、
抜き取ることができます。
ミラーは真中を貫通するスリーブと、スリーブにはさまれたフーカスアーム。
アームにはメスネジが切ってあります。 本体側にはフォーカスシャフトとスプリング。
フォーカスシャフトの先端はネジになっていてここの動きでミラーが前後する仕組みです。
フォーカスシャフトをいじってみてください。 ガタガタしませんか? かなりゆるくなっています。
滑らかなフォーカスフィーリングを得るためにこのくらいが本来妥当なのだと思いますが、この横方向への
アソビはそのままミラーの動きとして観察されます。 ミラーシフトの一因です。
合焦シャフト与圧ネジリングは横に周り止めのセットビスにより固定されていますから、これを緩めて
様子をみながらネジリングを締めていきます。 ネジリングは2箇所にミゾが切ってあるので
マイナスドライバーの小さいもので回せます。(カニ目レンチの丈夫なものがあればそれがベターかも)
シャフトをいじりながらガタが止まる位置をさぐります。 時々ノブをとりつけて回してなんとか回る範囲で
硬くしめていけばバッチリ。 焦点位置はもうずらすこともない!というような方はガチガチにしてしまって
ガイド用カメラのついているスリーブ部分で微調整してもいいかもしれません。
キマったら回り止めネジを再度締めこんで完成。
このネジリングをノブ付きのものとして別途製作すればシフトロック装置を作る事も簡単ですね。
さて、これでミラーシフトの原因1つをやっつけました。
しかし、、ガタの原因はもう一箇所あります。
それはミラーがフローティングマウントされている点。
これはミラーが熱膨張したり、余計な応力をかけて面を変形させないための配慮から多少の
アソビがわざとつくってあるか、弱いテンションをかけて真中をサンドイッチにして固定する為です。
ミラーを円周方向に動かしてみると、、、カクカクと動きます、、、 ちょっと緩すぎかな。
中央部は遮蔽されるところもあるので多少圧が掛かって変形したところで使わないところになる率が
高いので真中で挟んで固定する方式が多いのでしょう。 この部分固定しちゃいたいなぁ、、、と
思いますね。 眼視観望だと気温等によってきっちり固定すると見え方がおかしくなるかもしれません。
熱変形でミラーが伸びたものを逃がすところがなくなるからです。
、、、が、どのみちガイド鏡にしか使わないのであれば、、しかも比較的口径が小さく元から作りも結構
アバウトなことを考えると、弊害があるかもしれませんがあえて接着固定します。
フォーカスアームになっている鉄板とミラーの裏側の間にエポキシ樹脂を点付けしてやればこの部分の
アソビは除去できそうです。 またこの程度の接着ならば後から気にいらなくなっても剥がしてリカバリー
できるでしょう。
この2つの小細工で恐るべき効果です。
組み立て後星をのぞきながら合焦ノブを動かすと、それまで星がヌメーッっと横ずれしていたものが
止まったままフォーカシングできます。 ヌメーッとした感触はずばりグリスの粘度。
ガイド鏡とした場合にはフォーカス後や、鏡筒の向きを変えたりしたときにシャフトやミラーが動いて
ぬめーっと星が流れてしまっていましたが、これでガッチリ固定されましたから大丈夫、、、なはず(自信なげ)
以上でミラーシフト対策自体はおしまいです。 しかし折角分解したのですからついでに、、、、
■バッフル内外のつや消し処理
以前から気になっていたのですが、MC90Lのバッフル外側や内側には迷光防止のために細かいネジ状の
ミゾが刻んでありますが、これがテカテカと光沢があってコントラストに良い影響があるとは思えません。(実際よくないです)
そこで分解ついでに、まずはここをつや消し塗装します。
ミラーはバッフルを貫通してフーカスアームの裏側から強固に接着されていますから分解は破壊しないと無理です。
そこでこのままマスクして塗装します。 比較的薄いビニール袋の中央に小さめの穴をあけて、バッフルにおしつけて
突き通してやればうまくマスクできます。 裏側はテープでスキマができないように貼ってください。
つや消しには定番の「耐熱ブラック」を使います。 やや遠くから薄めにスプレーするのがコツです。
(この例では残りが少ない缶を使ったのであまりうまくできていません^^;)
バッフルの裏側から中もつや消しします。
上の写真はつや消し前の光沢のあるバッフルとマスクの様子。
下の写真はつや消し処理後の状態です。 うまくすればもっと綺麗につや消しにできます。
バッフルについているネジをとればミラーは抜けますが、しゅう動部にグリスが塗布されているので
外すより一番ミラーが上にくる位置に移動させ、はみ出したグリスをふき取ってからマスクして
塗装したほうが良いように思えました。
その後実際に組み立てて覗いたのですがコントラストはやっぱりかなりアップしました。 月など見るとよくわかりますね。
ついでに、、、、おさえが肝心。
■MC90L用2点止め接眼部(スリーブ)
ガイド鏡として使う望遠鏡は、多くの方が2点止めにしてガタを出さないようにしています。 これはかなり重要な点です。
他がガチガチでもWebカメラやガイドに使うカメラのスリーブがガタついていては灯台元暗しであります。
普通のものならBORGの2点止めスリーブ(誠報社等でいうところの「強化接眼部」)に交換するだけですが、
MC90L、、、ネジの系が普通じゃありません。 直視側は直角側と焦点を調整できるようにしてある為でしょう。
やることは簡単です。 自分でもう一箇所穴をあけてネジを切るだけです。
元からあるアイピース固定ネジから円周方向に60度ほど離れた位置に、φ2.5の穴をドリルであけます。
小さいので開けにくいという場合には、ピンバイスででも穴あけ可能です。 その後M3のネジをハンドタップで切れば完成。
ネジはどうするのか? ホームセンターでローレットボルトとか、ノブ付きボルトというような名称で普通に売っています。
ドリルもタップもすべてホームセンターで普通に売っているようなものです。
もしやったこともないという方でしたらこの際チャレンジしてみてください。 やってみると案外簡単ですよ。
同じ方法で、手持ちのあらゆる望遠鏡を2点止めにすることができるわけです。
お金のある方は高級なアポ屈折をガイド鏡にしたほうが、はじめから小さい星像が得られて精密なガイドが可能でしょうね。
ガイド鏡にフローライトとかをつけている人を最初見た時は、なんちゅー贅沢な!けしからーん!(笑:ヒガミ)と思ったりも
しましたが、短焦点アクロのようなボテボテの星像ではなく、シャープで小さい星像でガイドしたほうが精密にガイドできる
という機能上の必然からです。
MC90Lをガイド鏡にしちゃうようなプアお仲間(失礼、、私だけかも)は、手間隙かけてプロセスを楽しみましょう。
P.S. その後格安にてFS60Cをガイド鏡としてゲットしましたが、あまりに良く見えるので結局眼視用になりました。
このあたりが貧乏くさいですね^^;