■装備の解説

それぞれの塊について少し説明を加えたいと思います。 その意味を知っていると皆さんでさらに工夫して
快適して頂くこともできるでしょう。


 3 プラコンテナ(その1)

  星図、カメラ、カイロ、各種リング等の小道具をまとめていれておきます。
  現地で頻繁に出し入れするものをまとめておくと便利です。


  
    プラコンテナはホームセンターの収納用品売り場で販売しているものや、
  自動車用品のコーナー、工具売り場にありますからお手持ちの道具のサイズや量に
  合わせて選ばれると良いでしょう。 なお複数になる場合にはサイズを揃えると
  重ねて保管できて便利です。  プラスティックケースは安価で比較的衝撃にも強く
  フィールドで襲う激しい夜露から小道具を保護してくれるので具合がいいですよ。

  
  内容物。 左の小さなプラケースは消耗品類がまとめてあります。 各種フォーマットで切り替えて撮影するので
  管理人の荷物にはカメラが副数台入っています。 撮影鏡とガイド鏡を束ねるマッチプレートやガイドマウントも
  鏡筒バンドを使わずアリミゾで固定する場合には同じコンテナに収納しています。


  

  
  一番左の小さいプラケースには
  
消耗品類が主にまとめてあります。 現地ですぐに欲しいものとほぼイコールです。

  暗視野照明付きのファインダーやヘッドライト、カメラのレリーズ用のボタン電池など、場所によってはコンビニエンス
  で買えない場合もあるのと、気温が下がると減りが早いので大目に入れてあります。
   ビニール袋に入った黄色いものは、レンズを拭くためのクリーニングクロスです。 極力拭かないようにしていますが
  指紋をつけてしまった場合等必要になることがあります。 ホコリが付いたまま拭くとコーティングに傷を入れてしまうので
  ビニール袋につつんでチリをよけています。
   フィルムは35mm、ブローニーと複数持参。 35mmネガはコニカミノルタセンチュリアズームスーパー400か800が
  赤い星雲が写る唯一のフィルムでした。 コダックE200は天体写真では定番中の定番です。

   現地で思わぬ場所のネジがゆるんだり、Tリングの位置合わせ等に各サイズのL型六角レンチ(アーレンキーレンチ)
  やマイクロドライバー、予備のヒューズ、なくしそうだと思えるボルト類の予備を小さなふくろにまとめてあります。
  幾度か救われました。 ファインダーの特殊ネジ等はビクセンなら問い合わせれば分けてくれます。


  右上のほうはカイロ関連です。

  
   レンズの結露防止には灰式カイロが便利です。 大きい写真用品店や山岳用品店で入手できます。
  桐灰カイロと言われることもありますがそれは過去に同種の製品を製造していたメーカー名です。
  現在は楠灰製造株式会社というメーカーが一社のみ細々と製造しています。 
  
  
  ターボライターで両端を1cm燃焼させ、蓋をしめて付属のネル生地の袋に入れて使います。 

  
    野外ではかなりの頻度で色々なものが結露します。 もちろん撮影に使っている望遠鏡のレンズ、
  ガイド鏡は真っ先に被害にあいます。 一度結露すると拭いても無駄です。(ふいてはいけません)
  鏡筒のレンズ付近に軽く熱を加えてやることでレンズへの結露を防止できます。
  屈折やマクストフカセグレンの補正版に有効ですよ。 ベルクロバンド(ゴム付きがいいです)等で
  鏡筒に固定します。 また結露防止にフードを取付けることはもっと重要です。
  フードは簡単に自作できます(後述)

  電熱ヒーターを多様するとバッテリーを早く消耗するのであえて灰カイロを愛用しています。
  ただしEDレンズ等の、温度差でピント位置が変化しやすい光学系には要注意です。 
   でも、使えないということはありません。 何本も鏡筒がある方がいちいちヒーターを仕込んでいては
  バッテリーもお財布ももちませんからここはちょっとした工夫で。 
  タオルを一枚入れる等で温度を調整してやればEDアポクロマートな望遠鏡でも大丈夫ですよ。
  多くの方がピント移動を嫌って、EDには灰カイロはつかえないというのが定説になっていますが
  私や知人もこうすることで灰カイロでも問題なく使えていますのでお試しください。

  また、冬場は人間が暖を取るにも大変あたたかで、有り難いものです。
  燃料棒は湿気をおびると途中で消えてしまったりしやすいので、ジプロック(密封ビニール袋)に
  乾燥剤と一緒に入れて乾燥した状態を保つようにするのがお勧めです。
  
   着火には普通のライターではなかなか火が着かないのでターボライターがお勧めです。
  なお、このカイロのお求めはWebではこちらなどからどうぞ。 ナチュラム


  
  デジタルカメラ一式。 天体用に赤外カットフィルターを改造したデジタル一眼レフの他に、
  予備のバッテリー、レリーズに使うリモコン、予備の記録メディア、
  そしてブロワ−が固めのウレタンポーチに入っています。
  デジタル一眼レフの液晶には、自動車用のスモークフィルムを張って減光してあります。
  天体観望地でカメラの液晶画面の明るさはかなり迷惑を掛けているはずです。
    写真好きな天文ファンとしては気を付けたい面だと思います。
  また露出完了時やフォーカス時にフォーカス補助光が光る機種は黒いテープ等を貼って
  光が出ないようにしないとヒンシュクモノです。

   ブロワ−はレンズ類についたほこりを払う時、CCDにホコリが付着した場合に吹き飛ばすのに
  必須です。(本当は吹き飛ばすとチリが中に残留するので、
  専用のクリーニングキットで吸着したほうがいいですが、暗闇でそんな細かい作業はできません)
  また、結露してしまったファインダーの露を飛ばすのにも具合がよいので持参している人は多いです。
  写真には写っていませんが、自動車の社内には専用のバッテリー充電器と、シガライターから
  100Vを得るためのインバータが載せてあります。

  
  中判サイズで銀塩撮影する時には、扱いが35mmの一眼レフに近い
  ペンタックスの6X7に、無電源バルブプレートを取付けたものを使っています。
  一般撮影することもあるので、吸引改造はされていませんが、大きいフィルムなので
  よくフィルムが浮きます。 40〜90分露出するので吸引は必須なのでしょう。
  無電源バルブプレートにはレリーズが2本必要です。 白く丸いのは77mmφの
  フィルターケースです。 中判撮影にはLPS−P2のような光害カットフィルター
  がないとカブってしまいます。 フィルター不要の空は日本ではかなり限られた
  場所しかもはや残っていないかもしれません。 中判はビクセンのDED108SS
  のような80mm以上の広いイメージサークルを持つ鏡筒で主に用います。
  通常のイメージサークルの鏡筒ですと周囲がケラレるので円形写野で使うのも
  悪くありませんね。
  
  35mmでフィルム撮影する場合には、バルブ開放中に電池を消耗しない
  完全機械式のカメラが良いです。 低温になると電池の電圧も低下しやすく
  電子シャッターのものですと露出中に突然シャッターが降りてしまうことがあり
  具合がよくありません。 ビクセンが過去に天体用に使いやすくヤシカのカメラを
  設計変更したVX−1というカメラを出していました。 大変軽量で電池も不要の
  完全機械式、そしてファインダーマットが透過式なので星のような暗い対象も
  ファインダーであるていどピンとあわせが可能です。 VC200L,AV102SS等の
  通常のイメージサークル(良像半径)をもつ鏡筒に使用しています。
  同カメラに使用するレリーズも写っています。 

  
  カメラの収納は、乾燥剤、防カビ剤といっしょにジプロックにて密封し、
  内側にエアキャップを重ねて緩衝材を追加したソフトポーチにいれて運んでいます。
  カメラの内部が湿気ってしまうとカビるだけではなく、フィルムが浮きやすくなりますので
  デジタル以上に気をつかってしまいます。 またメカ部分が多いので破損にも用心が
  必要です。
  
  三脚の開き止めに取付ける、通称「三角フレーム」には、赤道儀の据付を
  助ける水準器、初めての場所でまだ明るい時間に設置する場合に便利な
  コンパス、マッチプレートを赤道儀に固定する等、組み立てに即用するレンチ、
  防水のキッチンタイマー、三角フレームを三脚に固定する
  蝶ネジ(フィルムケースに入っています)が乗っています。
   水準器、キッチンタイマーはマグネットで固定され、コンパスはマジックテープで
  はりついています。 レンチはキッチンタイマーで挟んで固定されて収納時に飛散
  しないように工夫してあります。 フィールドでも使用順序的にも具合の良い配置です。


  
  赤いヘッドライトは取り出しやすい三角フレームの上か、車内のすぐ取れる位置に
  配置してあります。 赤いヘッドライトを忘れると最悪です。 なにもできません。
  予備を一つ車に入れたままにしておくと安心です。 安価に自作できます。


  
  星図や天体ガイドマップは、フィールドで使うと夜露で一発でダメになります。
  そこで、もう一冊購入した本をバラバラにして、クリアファイルに入れることで
  湿気対策としています。 星図は巨大なものを愛用しているのでコピーして手書きを加えたものを
  同じようにクリアファイルにいれてあります。 雨でぬれたのではないかと思えるほどに
  ものすごい露が降りますから、初めてフィールドに出かける方は驚くかもしれません。
  風がある日や、空気が乾燥している場所では結露しないで済む場合もありますが、
  結露する日のほうが多いように思えます。


  
  結露といえばこの道具を忘れてはいけません。 大自工業製の「豆ドラ」。
  12Vで動作するコンパクトなドライヤーです。 
  対策を施してもどうしてもレンズやミラーが結露してしまった場合の最終兵器です。
   このドライヤーで暖めて結露を除去できます。 持っていてよかった、、、と思える
  お守りのような大切な装備です。 電源は12Vバッテリーから取り出します。
  取り出しケーブルは後述されています。


 本来の髪を乾かすような用途に
  実用になるのか極めてアヤシイほどの弱いパワーですが、そこがまた天文ファンには好都合。
  

  
  延長チューブ、接続リング、対象確認アダプターもまとめてポーチに入れてあります。
  対象確認アダプターとは、カメラアダプターがとりつけられている望遠鏡では
  アイピースがとりつけできないので、カメラマウントをアイピーススリーブに変換する
  アダプターです。  ファインダーでは暗すぎて撮影対象や星並びから構図を決定
  できませんので、ピントを合わせた後にカメラをいったん取り外し、
  この対象確認アダプターに付け替えてアイピースをとりつければ目視できるようになります。
   撮影する機会が多い人が、ちょっと観望してみたくなったような場合にもよく使います。
  撮影好きな方必携の小道具です。 簡単に自作できますよ。(別記事にて紹介します)


  
  さて、これは何でしょう。 黒い板です。
  フィルムで撮影する場合、シャッターの衝撃でブレてしまわないように、
  まず望遠鏡の先をこの黒いボードで覆ってからレリーズでシャッターを切り、
  振動が収まってからこのボードをどける「筒先シャッター」という手法に
  使います。  固定撮影でも必携の道具です。 スチレンボードやプラダンボール
  に、黒いつや消しの植毛シートをはりつけたものです。 いずれもホームセンターで
  購入できます。 デジタル一眼では振動が少ないので不用な場合もありますが
  長焦点や念入りにやりたい方は是非どうぞ。


  
  三脚アジャスター。 下が堅く平らなコンクリートばかりとは限りません。
  夏場のやわらかくなったアスファルト、砂利、土かもしれません。
  先のとがった三脚は地面にめりこんでしまい、極軸望遠鏡を丁寧にあわせても
  どんどんズレていってしまいます。  またビクセンGP(GP2)やミザールのAR-1
  のような、本体ごと水平出しをしなければならない極軸望遠鏡を装備した赤道儀の場合
  微調整にこの三脚アジャスターが半ば必須アイテムです。 
  無段伸縮三脚の場合、それぞれの足を器用に伸ばしたり縮めたりして調整することもできますが
  結構しんどいです。  ビクセンのメーカーカタログから消えてしまいましたが、
  主にGP(GP2)ユーザーからの要望により、ビクセンマーケティングさんで再生産、販売
  してくれるようになりました。  他社と比較してもらえば分かりますがかなり破格です。 
   また他の赤道儀をお使いの方もめりこみ防止にこのような三脚アジャスターや
  フラットナーは必要なものです。  地面の状態によりこの下に木片を敷く場合もあります。
   傷がつかないように各々を小さいポーチに入れて運搬しています。

  
  どうしてもガイドが決まらない最悪の場合、現地で赤道儀を軽く分解し、バックラッシュを調整する事もあります。
  そうした場合に必要な工具も片隅に入れてあります。 2回ほどこれで難を逃れました。
  いつも絶好調の赤道儀で運用するのはヲトコ(ヲタク?)のたしなみ(苦笑)

  
  ガイド撮影に使うマッチプレート、ガイドマウント、そして鏡筒バンド。
  写真では誠報社の強化鏡筒バンドが装着されていますが、長焦点でない場合には
  アリミゾになっています。 この場合収納できますからプラコンテナに入れています。
  現地でボルト絞めをしなくて良いように、このように組み立てた状態で運んでいます。
  またガイド鏡もすばやい着脱ができるようにタカハシ製のオプションを用いアリミゾに
  してあります。 現地での組み立て、撤収をいかに楽にするかが大切です。

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