■遠征観望の実際 (深夜のアウトドア)


 


 星空がしっかり楽しめるような場所は山や高原のような自然の中などになります。
 ちょっとしたアウトドアの楽しみでもあります。 
 実際に遠征観望をする際にお役に立てて頂けそうな情報をご紹介します。

       


■機材の事前準備が大切です

 遠征観望を楽しむのに大切なのは、出発前の事前準備と、大切な機材を破損することなく運搬する為の
パッキングテクニックがまず思い浮かびます。 

 現地に到着して「あ、あれを忘れた!」とか「暗くて調整ができない!」等ということは最初のうちよくあります。 
自宅にて事前に現地で使う望遠鏡を実際に組み立て、撤収を何度かやっておけば
必要な接続部品や工具を忘れずにすみます。 
 三脚をガッチリ絞めるための六角レンチ、ドライバー、ファインダーを調整する小さなレンチ、乾電池等
を忘れてくる方は結構多いようですよ。 

現地に到着して実際に覗き始めるまでを頭の中でシミュレーションしながら道具を箱に次々と入れていく
忘れ物を減らすことができます。 また自宅とは異なり、遠征観望地特有に必要となる小道具もありますから
こちらも後に説明します。 思い立っていきなり出発ではなく、遠征観望には機材の事前準備が必要です。

その際に頭の片隅においておくと良いのは次のような点が思い浮かびます。

 1 迷惑となる明かりを撒き散らさないように減光処理を施す。
 2 現地で行う作業をできるだけ減らす
 3 よく使うものとそうでないものを分ける (暗闇でものを探す苦労を避ける)
 4 機材を運搬時の衝撃や湿気から保護する
 
5 すばやい組み立て、撤収ができるような工夫
 6 電源の確保、節約を考える
 7 防寒 (機材&人間)
 8 結露対策
 
9 冬場は雪道、夏場は害虫対策


8番の結露は侮れません。 季節によっては遠征観望地では結露との戦いとなる場合もあります。 
冬ならばあらゆるものが簡単に凍ってしまいますよ。 下の写真は白く氷結してしまった望遠鏡の
フードです。 写真では分かりませんが赤道儀、鏡筒の一部、ファインダーのレンズまでもが氷結
してしまいました。 夏場ならばこれが水滴です。 光学、電子機器にとっては過酷な環境です。



■オススメの小物


20%OFF HIGHMOUNT ハイマウント ハンドウォーマー エコカイロ

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 これ探してる人結構いらっしゃるのでは? 管理人愛用の木炭カイロ。電源いらずで8時間。
 望遠鏡やカメラレンズの先に取り付けて夜露を防ぎます。
  最近ではあまり売っていないのですが写真屋、登山家さんの一部では根強いファンがいます。

20%OFF HIGHMOUNT ハイマウント ハンドウォーマー用木炭 カイロ用交換木炭

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 同カイロ用木炭。 私は見つけたらまとめ買いしています。ネットで探した中では最安値かもしれません。

CARCHA01 クルマ DE チャージャー:サンコーレアモノショップ

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パソコンでオートガイドなどしたい方、まさか発電機使ったり、一晩中アイドリングなんて
してませんよね? そんな恥ずかしいことをしたくないけど、PCでバッテリーが大変
という貴方にオススメのアイテム。 管理人も愛用のクルマdeチャージャー。
普通のカーバッテリーから直接12V以上の電圧を取り出せます。各種PC対応。
 一度インバータで100Vにしてそこから付属のアダプターで充電なんてしてると
ものすごいロスです。 これならバッテリーも驚くほど長持ちしますよ。

■持参する道具とパッキング

 では、具体的にどのような道具達を、どのように収納し、運んだらよいのでしょうか? 
 また、機材を見ることで、遠征先でどのような楽しみ方、対処が必要なのかを垣間見ることができますので
 管理人の例で恐縮なのですがイメージしやすいようにご紹介してみます。  もっといい道具の収納や
 便利な小道具があるかもしれません。 皆様のオススメがありましたら是非管理人にも教えてください。
 掲示板でご紹介くださってもいいですよ!

  直焦点撮影を中型赤道儀にて行う場合にはこのくらいの荷物になります。

  


  相当な荷物量ではないでしょうか。 重量もかなりになります。 運転にも注意が必要です。
 また、撮影鏡を複数持参する場合、観望用の望遠鏡をもう1セット持参する場合にはさらに荷物が増えることになります。
 人によっては折りたたみテーブルを持参したり、ノートパソコンが必要という方もいらっしゃるかと思います。
 できるだけシステマティックに収納し、頻繁に使うものとそうでないもの、使用する順番等を考えて、それぞれを
 分類して固めておくと暗闇でも扱いやすく、設営、撤収が大変楽になります。

 以下にこれらの荷物の内訳を一覧にしてみました。 皆様の状況に合わせて足したり引いたりして自分用の持ち物リストを
 作成されるのはいかがでしょうか。 ちょっとした小物一つ忘れるだけで観望、撮影不能になったり、快適な観望を
 楽しめなくなることがあります。 

 表の「荷姿」の部分が荷物のひとかたまりです。 
 クリックすると詳細の解説とどのように役立つのかがご覧頂けます。 
 ご自身の「遠征セット」調達の際のご参考にどうぞ。

荷姿 分類 内容物 積載場所
鏡筒ケース(バッグ) 撮影鏡

  (メイン望遠鏡)
撮影鏡本体(例ではVC200L)
ファインダー
以下は撮影鏡に取付け
カメラレンズ用のキャップで蓋をしておく
    直焦ワイドアダプター
    光害カットフィルター
    レデューサ
    Tリング(カメラアダプタ)
後部座席
プチプチで
くるんだ
ガイド鏡
ガイド鏡

  (ガイドマウントに
  乗せるだけの
  状態に組み立て済)
ガイド鏡
ガイド鏡用フード
ベルクロバンド(カイロ取り付け用)
ファインダー

後部座席
プラコンテナ 1 カメラ、他小道具等
現地で頻繁に使うもの
小物入れプラケース
    電池等消耗品
    フィルム(6X7、35mm)
    レンズクリーニングクロス
    予備工具
       (各種Lレンチ、マイクロドライバー、
        スペアヒューズ等)  
     灰式カイロ
     燃料棒数本  
     カイロ着火用ターボライター

カメラ (35mm、6X7、デジタル一眼)
レリーズ (例では3本)
デジタル一眼用リモコン
デジタル一眼用予備バッテリー
デジタル一眼用予備記録メディア
ブロワ−

三角フレーム(すぐ使う物をマジックテープで取付)
    赤い光のヘッドライト(白い光のはダメです)
    水準器
    コンパス(赤道儀セッティング補助)
    マッチプレート取り付け用レンチ
    防水キッチンタイマー(露出時間計測用)
    三角フレーム取付ネジ(フィルムケースに)

星図(バラしてクリアファイルに。結露対策)


12Vドライヤー (結露したときの最終手段)
対象確認アダプター (Fマウント、Kマウント、6X7)
延長チューブ、接眼部
筒先シャッター用ブラックボード(植毛シート貼付)
三脚アジャスター
マッチプレート(撮影鏡、ガイド鏡同架用)
    ガイドマウント(プレートに取り付けたまま)

トランク
プラコンテナ 2 赤道儀本体収納 ニューアトラクス赤道儀

 緩衝材を大量に敷き、クランプは必ずゆるめること。
トランク
ショートスキーバッグ 赤道儀三脚 ジュラポール三脚
固めのかまぼこ板 (めり込み防止用)
トランク
ソフトポーチ
  に入った
A4サイズの
 プラアタシュ
赤道儀、
オートガイダー
関連一式
スカイセンサー(赤道儀コントローラ)
コントローラ−赤道儀接続ケーブル
赤道儀電源コネクター
AGA-1(オートガイダー)
オートガイド用CCDカメラ
モニター用ポケット液晶TV
液晶TV−AGA-1接続ケーブル
オートガイドケーブル
トランク
B5サイズ
アタッシュケース 1
アイピース アイピース各種
  (ウレタンで緩衝されています)
トランク
B5サイズ
アタッシュケース 2
ピント用具、天頂ミラー等 ピントルーペ
スリガラス
マルチモノキュラー(デジカメ用)
ナイフエッジテスター(35mm用、67用)
天頂ミラー(31.7、2インチ)
2倍バローレンズ
暗視野照明付きガイドアイピース
トランク
保冷バッグ1 赤道儀、
オートガイダー電源
車用バッテリー
オートガイダー用ハーネス
   (複数のケーブルを使用位置にあわせてまとめたもの。
   コネクターで繋ぐだけにしてあります)
電源取り出し用ケーブル
   (片側ワニ口、
    片側シガーライターソケット)
ビクセン用電源ケーブル
   (方側シガーライターソケット、
    片側ビクセン電源コネクタ)
頻繁に使う乾電池
   (単三4本、ヘッドライト用ボタン電池)
極軸望遠鏡の説明書
ベルクロバンド
   (マジックテープバンド
   コードを束ねたり、鏡筒にカイロを止めたりする)
助手席と
後部座席の
間にはさんで
倒れないように)
保冷バッグ2 ヒーター用電源 バイク用バッテリー トランク
倒れないように
鏡筒用フード 鏡筒用フード 撮影鏡用のもの
ガイド鏡用のもの
トランク
保冷バッグ(小) 赤道儀用バランスウエイト バランスウエイト 2個 運転席後部
折りたたみ椅子 椅子 椅子 トランク
双眼鏡ケース 双眼鏡 双眼鏡 (例ではアルティマ9X63) 後部座席
銀マット 銀マット 銀マット。 寝転がって双眼鏡を覗く時、
下が石だらけの場所で膝をついてピント合わせする時等
あると大変便利。
トランク
バッグ コンロ、食料類 ガスコンロ
ガスカートリッジ
ストームガード(コンロの風よけ)
タオル
トイレに流せるティッシュ
コッフェル(鍋)
コーヒー
紙コップ、
プラスプーン
はし
ラーメン
夏場は香取線香、虫除け
トランク
2L ペットボトル お湯をわかして使います。 トランク
雑巾 雑巾 雑巾数枚。 撤収時に夜露を拭き取るのに必要。
忘れると大変。
トランク等
懐中電灯 懐中電灯 懐中電灯
  赤色ヘッドライトとは別に、
  最後の撤収時、周りの人が
  いなければこれで落し物確認
室内
タイヤチェーン
 (冬季)
タイヤチェーン スタッドレスタイヤでない方、
冬忘れないようご注意ください
トランク等
12Vバッテリー
充電器
 (宿泊時)
12Vバッテリー
充電機器
12Vバッテリー充電器 トランク等
他充電器 デジカメ、
ノートPC充電器
インバータ
 (車のシガーライターからAC100Vを取り出す)
デジカメ充電器
ノートPC充電器
トランク等

■現地の情報収集を

 現地に到着して、あ、、あれがあれば! という他のものに、これから行く遠征先の緯度、経度の情報です。
 特に自動導入を使う方、正しくセットしておかないと導入が正確にできませんし、極望のセッティングにも
 必要になりますから事前にしらべておくといいですよ。 カーナビがある人は要らないのかな、、、

  mapfanやマピオン等のURLを見るとおおよその緯度、経度が分かります。

  

 これから行こうとしている遠征先のこれからの天候も、複数の天気予報を用いてチェックしてください。
 複数の天気予報を比較してしばらく使うと、それぞれどこが厳しい傾向で予報しているか、とか
 こことあそこが同じ場合大抵そうなる、、等のクセが分かってきます。
  天気予報の読みもテクニックのうちでしょうか。

  もし特定の天体現象を狙う場合は、何時にどのくらいの位置に見えるのかも考えて置くと、充実した観察ができます。
 場所によっては方角によって光害があり満足に観察できなかったり、低い位置の天体ならば短時間しか
 観察できないかもしれません。 天文雑誌で場所や時刻を調べたり、パソコン用のプラネタリウムソフトで
 チェックしておくのも良いと思います。 特に複数の天体を撮影しようという場合など、昇ってくる順番や露出時間も
 頭の片隅において、あらかじめシミュレーションしておくと狙いを逃すことが少なくなります。

 

  上の画像は、「つるちゃんのプラネタリウム」というフリーのプラネタリウムソフトです。
 観望地の緯度経度、見る方角、表示方法等を設定できますから大変便利です。
 しかもフリーではありますが大変良くできています。 あり難く使わせて頂いております。

 ちょっといつもより遠くへ行こうという場合や、泊りがけの場合には、地元でおいしいものを食べたり、
 帰りに温泉に入っていくのも悪くありません。(ただし眠くなるので仮眠してください)
 地元の科学館や天文台、プラネタリウムを訪れてみると思わぬ感激があったりもします。
  天文ファンならではの観光も遠征での楽しみとなることがあります。


■到着〜設営

 できればまだ明るい時間に遠征先に到着すると、気分に余裕をもって望遠鏡を据え付けたり、自分の観察対象に
 具合のよい場所をチョイスすることができます。 またこれからやって来る天文趣味の同志とも沢山歓談
 する機会が増えますからできるだけ早めに到着するようにしましょう。 

 

 もちろん仕事が終わってからでなければ
 行けないという方も多いでしょう。 それでも気分だけはまったりと。^^ 
 トバしすぎて事故を起こしてしまったりしては面白くありませんからね。

  暗くなってから到着する場合には、できればスモールライトで進入し
 停車後は明かりをサッと消して
他のお仲間を照らしてしまわないような
 配慮ができると気が利いています。


  とはいえ無灯火での夜間走行は本来すべきことではありません。 
 安全に走行できないような場合に無理に消灯する必要もないでしょう。 

  どなたかすでにいらっしゃったり、後から訪れた方が近くだったら
 近寄って挨拶の一つでも交わしましょう。
 稀に写真撮影の方に鬱陶しがる方もいらっしゃいますがその時はその時です。 
 挨拶の一つもできないようでは人間性を疑います。 幾度も通うような場所であれば
 これは大変大切な事です。
  しばらく通うと声だけで、「あ、今日は○○さん遅かったね〜」なんて声を掛けてくれる事もあって
 これからの時間を有意義に過すことができます。 忘れ物をしてしまった場合に次回もってきてくれたりもします。
 自分のしらなかった天体に気付かせてくれたり、現場ならではのノウハウもどんどん蓄積されていきます。
 また同じ道具を使っている方なら同じようなところで苦戦していてお互いのささやかな情報で二人とも成功する
 なんてこともよくあります。 
  ぜひお仲間の天文ファンには挨拶を!^^

  有名な観望地ならば、新月期にもなると何人もお仲間がやってくるはずです。 
 途中でクルマがやってくる場合もありますから、特に駐車場の場合など
 他の通行への妨げにならないような場所で、写真をやる場合にならなるべく
 クルマのヘッドライトを浴びにくい場所に望遠鏡を据え付けます。 
  また風の強い場所ならば、風を避けることができる地形を選ぶと良いです。 
 自分の車のハッチを開けたままにして防風シェードにする方もいらっしゃいます。

  また、地面が土ですと結露しやすくなるので、状況がゆるせば地面がアスファルトのところが
 作業しやすくなります。写真をやる場合には沈み込みも少なく具合がいいでしょう。

  まだ明るいうちに望遠鏡を据え付けるならば、コンパスをつかっておおよそ北の方角に
 極軸が向くよう三脚アジャスター等を置き、三脚を据え付けます(赤道儀の場合)。
 反射式の方ならばできるだけ早く鏡筒を搭載し、蓋をあけて外気との順応をすませておく
 早い時間に性能を発揮してくれます。 特にクーラーの効いた車内、ヒーターで暖まった車内から外に出すと
 順応に時間がかかったり、急に蓋をあけると結露してしまったりもしますから、温度差が大きいと感じたら
 蓋をしばらく閉めたまま温度にならし、それから蓋を開けると思わぬ結露を回避できます。

 クルマのルームランプやトランクの照明は開けても点灯しないようにスイッチを切ったり、
 コネクターを抜いておく等すると暗くなってから何度も開け閉めする度に
 周囲のミナサンの迷惑を気にせずに済みます。
 クルマの車内照明の消灯対策もお忘れなく。

  
  日も落ちてきました。 刻々と色を変えていく美しい夕空を楽しみつつ星空を待つのも一興です。
 この時間は本来人間が自然に目が暗闇に慣れていく時間なのでしょう。 


 さあ、すっかり夜になりました。 活動開始です!
 観望、撮影、そして仲間との会話、存分にお楽しみくださいませ。

 
 時には星をぼ〜っと眺めたり、その場の雰囲気を満喫するのも悪くありません。
 写真ばかりやっている方、そういえば星を殆ど見ていなかったな、、なんて感じたら
 初心に返ってみると気持ちが晴れ晴れするかもしれませんよ。
 もしあなたが写真屋ではなく星屋であるならば。
  私はそう感じることがありますが、皆様は如何でしょうか

  
  管理人が北海道をバイクで野宿旅した時にポータブル赤道儀とデジタル一眼レフ付属のズームレンズで撮影した天の川。
  肉眼ではここまでくっきりとは見えませんが、空の場外が良ければザラザラ感まで感じられることがあります。 
  「ここに来てよかったな、、」そう思えるのはこんな空に出くわした時でしょう。


■撤収
  
  翌日の予定がない場合、徹夜の観望も悪くありません。 少しずつ空が明るくなっていく中に、金星や水星を見ることができる時期もあります。
  ゆっくりと色を変えていく空も大変趣があり、鳥のさえずりでも聞きながらモーニングコーヒーを沸かして仲間と楽しむ一時も良いものです。
  

  機材は薄明が始まる頃には片付け始める人が多いです。
  撤収時に注意する事は、夜露で濡れたまましまうのではなく、持参した雑巾で拭きとって
  来た時と同じように安全にパッキング、積載しましょう。

   徹夜で遠距離の帰路に尽くのは大変危険です。 マズイと感じた場合には躊躇せず
  その場でしばし車内で仮眠してからお帰りください。 

  
 早朝の山道ではシカ等の野生動物の飛び出しが大変多いです。
 くれぐれもご注意ください。

  是非とも安全運転で最後まで充実した遠征観望となりますように!


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