( 初心者の為の天体望遠鏡の選び方)
以下に、管理人の経験則や実感している事を元に望遠鏡選びのいろいろを書いてみます。
必ずしも正解ではないかもしれませんが、お役に立てて頂ければ幸いです。
■購入する前に覚えておくと良い事
天体望遠鏡が欲しい! まずはそこから入る、、という方もおられることでしょう。
独特のスタイルが、いかにも何か驚くような世界を垣間見させてくれるような気分にさせてくれます。
ですが悲しいことに、実際に満足のいく天体望遠鏡にめぐり合う人よりも、買ってガッカリする人のほうが
圧倒的に多いのです。 星を観察するのに用いる天体望遠鏡、双眼鏡は
予備知識無しに選ぶと多くの場合失敗します。
まずは入門書を読んでください。
そして、購入前にできるだけ観望会や、天文教室等に参加し、実際に望遠鏡を覗いて感触をつかんでください。
そのような場所では失敗談も含めて、具体的なアドバイスが得られることも少なくありません。
観望会や教室は各地の科学館、公開天文台、星まつりで開催されています。
また、購入するお店も大変重要です。 もし可能であれば、実物を展示している、
天体望遠鏡専門店でアドバイスを受け、相談しつつ絞り込んでいってください。
お店により、偏ったこだわりを押し付けられるような場合もあるかもしれません、
可能であれば複数のお店で相談されますと、自分に会ったお店探しができます。
●お店の選び方(クリックで別ページへ移動)
良心的なお店であれば、自分のところで販売した望遠鏡はしっかり面倒をみてくれます。
(さすがに他で購入したものの相談ばかりでは辛いでしょうが、、)
最安値でなくても、後の面倒見の良さや長く続ける事を考えると、
専門知識の豊富な店員のいる専門店での購入は決して高いものとはなりません。
専門店に行くとお客が殆ど居ない場合も少なくありません。 本当にそのくらいの趣味人口なのです。
是非緊張せずに店員さんに声をかけてみてください。
ひとたび口を開けば、本には載っていないような実際的なアドバイスであなたを助けてくれることでしょう。
もし、相談してみて自分に合わないな、と感じたならば別のお店を試すのも一つの手です。
ただ大変フレンドリーながら、売ることばかりしか考えていないお店もあるようですから、あなたの洞察力が試される部分です。
いずれにしましても、自分に合うお店が見つかれば強力なアドバイザーとなってくれるにちがいありません。
安さだけを最優先して、専門店以外で購入するのは、ある程度経験を積んだ後
自力で運用できる段階になってからが無難でしょう。
焦って購入されるといけませんので、不本意ではありますが、買ってはいけない望遠鏡、双眼鏡がどのようなものかから
ご説明いたします。 私がわざわざ書くまでもなく、Googleで「望遠鏡 粗悪品」や「望遠鏡 買ってはいけない」あたりで検索されますと
嫌というほど情報を得ることができます。(但し、一部過度に感情的なHPもあるようですので皆様の裁量で判断されますように。)
■買ってはいけないと思われる望遠鏡
1.パッケージや宣伝文句に「なんと脅威の高倍率●●●倍!」など、いかにも凄そうな高倍率が書かれているもの
入門書をすでにお読みの方は知っているので騙されることはないでしょうが、そうでなければ、倍率が高ければ遠くの天体も大きく見えて
凄そうだと感じるのも仕方ありません。 望遠鏡の性能を決定するのは倍率よりも、口径。
実用的な最高倍率は、口径の2倍、例えば口径80mmであれば160倍、口径100mmならば200倍あたり、というのが通説です。
私の経験則でも同じような意見です。 口径の許す範囲内で、倍率は接眼レンズを買い足して交換することでいくらでも変更できます。
ですので、マトモな望遠鏡が倍率を売り文句にすることはまずありません。
また、初心の方に盲点となりなすいのが焦点距離の問題です。
極端に全長が短い(≒焦点距離が短い)安価な屈折望遠鏡にもご注意ください。 反射式では短焦点でもそれなりに快適な
映像が楽しめる機種が多いですが、安価な屈折式(アクロマートレンズ)のものでは、ひどい色にじみや、惑星を
(適切な意味での)高倍率観察したい場合に像が甘くてどうにもならないからです。 光の通路が鈍角になるほど
望遠鏡の性能は悪化する傾向がある事を覚えておいてください。 これを抑制するためには特殊な光学ガラスや
複雑な構造が必要になり、対策にかかる費用は膨大です。 同じ口径、焦点距離の望遠鏡でも、
かたや3万、かたや20万というような値段の差があるのはそうした理由です。
安価な望遠鏡でこの問題に対策を施す事はコスト的に無理があります。
であれば、口径に対して焦点距離が長く、光が鋭角に通過する製品を選ぶのが賢い選択です。
口径だけでなく、焦点距離も非常に重要です。 (2011.10.23追記)
2. 超特価の望遠鏡 (3万円以下の望遠鏡)
望遠鏡は決して安い商品ではありません。 3万円というのは購入後、何年も使っていけるだけの内容をもっている望遠鏡が
苦労して探してギリギリ手にはいる境目の額だと思います。 中には特別な事情によりそれ以下の金額で入手できる製品も
ありますが、本当に稀なことで、初心者の方が簡単に見つけられるものには無いといってもいいでしょう。
精密に研磨されたレンズ、ミラー等をマトモに作製し、調整するには相当のコストが掛かる上、家庭用ゲーム機のように
爆発的に売れるたぐいのものでもありませんので、大量生産によるコストダウンが及びにくい世界なのです。
ですから定価の半額以下などというものは存在しないはずです。 あるとすれば、意図的に高額な価格を表示し、あたかも
お買い得のように錯覚させる額面どおりの価値がない商品くらいなものでしょう。 繰り返しますが
天体望遠鏡は決して安い買い物ではありません。
また、売り場も要注意対象です。 必ずというわけではないのですが、
量販店、ホームセンター等での購入は殆ど失敗します。 恐ろしいのは3万以上の値札ながら、まともに
使えそうもない望遠鏡が結構売っていたりするのです。高ければ良いだろうという心理を巧みに突いたあたりが油断なりません。
それ以下の値段でも陳列品に実用に耐えるものは少ないと感じます。 天体望遠鏡専門店で買いましょう。
3.オークションでの購入
少しでも安く購入しようという気持ちは理解できるものです。 その手段の一つとしてインターネットオークションの利用を
検討なさる方も少なくないでしょう。 ですが、オークションでマトモな商品を入手するには、製品固有の背景を十分知っている事、
出品されている背景まで見抜けるだけの天文趣味の経験値が必要です。 なぜ相手は出品しようと思ったのでしょうか?
機種変更の為とありますが、なぜ機種変更しなくてはならなくなったのでしょう。 時流やそれまでに出品傾向から
次はアレが出るだろうな、、とマニアの方なら予想ができるほどです。 そこまで分かっているならばリスクも承知の上ですので
心配はないでしょう。
ですが安く買おうというだけの理由でのオークション利用は間違いなくハマります。
新品であっても、なぜオークションで売らなければならないのでしょうか? 普通に売れない何らかの理由がある場合が多いです。
4.すぐ飽きてしまう望遠鏡(2011.10.23追記)
比較的安価な製品の中にもマトモな性能を示す製品がないわけではありません。
特に初心者向け天体望遠鏡専門店などで扱われるものなど、性能はなかなかのものですが
長く使えるかどうかという点でいくと狙いが違うように思えます。 少々架台など使いにくくなっても
できるだけ安価に製造し、とりあえずそこそこマトモな像を多くの人が見られるようにして
入り口を増やそうという狙いの製品です。 コストの制約からマトモな性能が維持できる範囲内で
設計すると、どうしても観察して感動的な映像が楽しめるターゲットは限られてきます。
土星の輪など、それなりに見えるのですが、そこから先に行かない方がとても多いのを観察しています。
感動がほんの短期間で覚め、飽きてしまうようでは、この趣味の本当の楽しさがある部分にまで
持ちこたえてくれそうもありません。 大抵はかなり早い時期に限界に到達してしまいます。
多分その当事者は、もっとワンダフルな世界がその先にあるなんて気づきもしないで飽きてしまうのでしょう。
実に勿体ないです。 であれば、いっそのこともっともっと安価で作って楽しい組立て式望遠鏡など
教育的側面からも、最初に考えてみたい選択になってきます。 公的機関の天文教室で組立て望遠鏡が
多く活用されるのもそうした理由があります。(が、はやりすぐに飽きてしまうようですが)
安価な入門用の製品は、ほんのさわりの部分だけと、本当に理解した上で購入するか、
最初から目に焼きつくような感激のある上位機種を入手し、そうした機種は観察対象も多く、細かいところまで
よく見えますから継続的に観察したり、いろいろな対象に挑戦してみることも楽しくなってきます。
性能がマトモでも、観察対象が限定されてしまう望遠鏡ではすぐに飽きてしまいます。
そうした望遠鏡はむしろ一通りやってきたベテラン目線でよい製品なのかもしれません。
ある程度、もっと先を見てみたい!と観察者を刺激してくれたり、その要求にこたえてくれるような
望遠鏡を選びましょう。 その選び方は後述されていきます。
ではどうやって自分にピッタリの天体望遠鏡を選んだら良いのでしょうか? アプローチはいくつかありますが、予算の範囲内で
無理のない良質な望遠鏡を探すのも一つの手です。 天体望遠鏡というのは恐ろしいもので、下は3,4万の安価な入門機から、
上は個人向けでも筒だけで150万円、台だけで250万円などという値段が平気で飛び出す世界です。
雑誌の天体写真コンテストで入選を狙うような方ならば、全部で200万円〜600万円ほどつぎ込んでいる人もザラという世界。
ですから上を見始めたらキリがありません。 生活を守りつつ、許された予算の範囲内で選択するのが健全でしょう。
目安としまして、前述のごとく6万くらいからが、長く使える望遠鏡のボーダーラインです。
簡易型のもので3万程度で良品もありますがおおよそ10万ほどから満足度の高い製品が選択しやすくなります。
最初は、天体写真は考えないでください。
2017年末現在で入手可能な3万円程度からの入門機の例をご紹介しておきます。
※近年一部メーカーでは、内容にして値段が異様に上昇傾向です。
<激安コース>
とはいえ、長くつかう事を考えなければ(すぐ上位機種に買い換えるところまで考えている場合)、
さわりとしてチャレンジするというなら、こういう選択肢もあります。
組立天体望遠鏡35倍
とりあえず数千円で試してみようか、、という向きには一つの選択肢として積極的にオススメな望遠鏡。
1万円以下だとあと少し本格的なものや、初心者向け天体望遠鏡専門店などで扱っているものもありますが
この望遠鏡は2880円!! こんなオモチャみたいなもので見えるか!と思えますが、私も実際に試して
大変楽しめました。 35倍でも月面のクレーター、土星の輪の存在、木星の4つのガリレオ衛星、明るい星団など
かなりしつこく遊べます。 これで飽きる頃には、3万円コース以上でないと満足できなくなっているでしょうね。
なお、マニアの方はこれを改造してアソビつくしております。 市販のカメラ三脚に取り付けてお子様といっしょにどうぞ。
改造ベースなら15倍のほうに、BORGの樹脂製アイピース延長筒をとりつけて、市販のアイピースを交換可能に!
<穴場コース>
ミザール 天体望遠鏡 屈折式 MT-70R
ある程度長く星趣味をやっている方ならご存知の、ミザール「K型経緯台」に
軽量な70mm屈折をセットした廉価な割に真面目なセット。(実売は1万円台です)
予算が許さない場合や微動がついたマトモで軽量な経緯台が欲しいという方に。
望遠鏡本体はビクセンのA70Lfに近似の性能です。
いまやミザールも昔のように良質な望遠鏡が殆ど無くなってしまったが、
MT-70Rは最後の良心のように感じます。
ビクセンのポルタ経緯台が高くなってしまった今、2万以下の穴場的存在かも!?
付属レンズによっては過剰倍率になる組み合わせも出てしまいますが、
使わなければいいだけの事。 同シリーズの90mm口径のものより軽量な分
台とのバランスが良いです。 接眼部他は樹脂製ですが天体写真を撮るわけでも
ありませんから樹脂で軽く作ってあったほうがむしろ好都合。なんでも金属製が
いいという訳でもありません。最近のマイナーチェンジでアメリカンサイズのアイピースが
標準になりましたので、接眼レンズも選びやすくなりました。
エデュサイエンス80mm 屈折式学習用天体望遠鏡
「天体望遠鏡は専門店で」と書いておきましたが、最近のトイザらスは侮れません。
同社のプライベートブランド、「エデュサイエンス」の一部にはやたら良質な製品が
隠れています。こういう製品が量販店に並ぶようになったというのは歓迎すべき
傾向ではありませんか。 この80mm口径のものはとある天文台に来ていた少年
が持っていたのを貸してもらったのだが、正直馬鹿にするつもりで(失礼)
覗いたらビックリ。下手するとA80Lfに勝ってるかも、、、どこで買ったかと
尋ねたらトイざラスというではありませんか。 しかも国産とは恐れ入りました
架台も見た目よりガッチリで使える製品です。
<3万円台コース>
ビクセン ポルタA70Lf 29400円 (実売価格例。 定価は36750円)製造中止になりました。
長年星に親しんでいる熟練者からも定評がある、ポルタ経緯台に、70mmの長焦点屈折望遠鏡を
セットした入門機。 このポルタ経緯台は、鏡筒部を後から交換することができる為、将来的に
グレードアップが可能。 もっと口径の大きな筒が欲しくなった場合にも台はそのまま使える為
台を買うつもりで入手するのも悪くない。 筒は口径が小さい為あまり明るくないが、口径に対しての
焦点距離が長めなので惑星や月はシャープに見える傾向にある。 3万円以内での屈折ではイチオシ。
予算がゆるせば是非あと1万円たして80mm口径のものを強くお薦めする。
<4万円コース> 4万円になるとグッと内容が良くなり、選択の幅も広がります。
ビクセン ポルタA80Mf 39400円 (実売価格例。 定価は49,350円)
ビクセン ポルタUA80Mf 55,000円(税別) (実売価格例 税込 41,580円)
この価格帯での屈折式ならば最も無難な選択ではないでしょうか。
3,4万円台の良質な入門機の多くは、このポルタ経緯台にビクセンや、他社の
鏡筒を組み合わせたものになっています。 口径が80mmになってくると
観察しやすい対象も増えて飽きないという点で効果が感じられます。
ただし製造は国内ではありませんし、レンズセルも樹脂製ですが、あくまで入門機です。
多くを求めてはいけない気がします。軽さも武器です。
■ 初心者には屈折式 → 何でも見たい初心者こそ反射式!
もっとも異論もありそうな所ではありますが、一つの意見として。
ポルタII R114M(VMオリジナル仕様) 49800円
初心者には反射式は向かないと、さも常識のように言われるが筆者は反対意見です。
よほど不器用でない限り欲深い初心者の要望をかなえてくれるのは口径の大きい反射式しかなさそうです。
今いいオジサンになっている元天文少年は小学生であっても10cm反射が定番でした。
中学生くらいなら普通にミラーも掃除するし光軸も自分で普通に合わせていたのだから。
また、かつて同社が一万円台という破格値で販売していた10cm反射望遠鏡R100Lドブソニアン(通称火星人)
などは近年でも初心者にお勧めの天体望遠鏡の筆頭であった事などを考えると、
初心者には反射はダメだという理屈は実情にそぐわない。
どちらかといえば初心者だから不向き、というより使用者の性格に依存する側面が大きいと思う。
7,8センチクラスのアクロマート屈折から10cm反射に移行するとほぼ例外なく、
シャープで迫力のある像に驚く様子を観察している。
ニュートン式反射望遠鏡はあらゆる光学系の中で中央部の映像がもっともシャープ
という点は、副鏡を吊るスパイダーのような邪魔者があっても大きなメリットの一つ。
中でも焦点距離が比較的長い10cmクラスの反射がこのところ入手困難だった。
月、土星、木星などは焦点距離が長めの反射で見ると格別な像が楽しめるので
古い10cmクラスを大事にしている古参のユーザーも少なくない。
あえてこのクラスの反射式を入門用セットとして組んできた販売店の狙いは的確だと思う。
ミラーの清掃や光軸の調整方法は前のセクションで紹介した入門書でも出てくるものがあるほど基本の話。
星を見ようというような探究心の強い方の多くにはさして高いハードルではないだろう。
そしてビクセンの反射望遠鏡は光軸がそう簡単に狂うようなこともない。
ミラーの再メッキなどはもはや過去の話だ。現在販売されているミラーは
表面に強固なコーティングがなされ、数十年単位で長持ちする。
私が現役で使っている10cm反射も今年35年目だが反射率の低下は多少あるかもしれないが
実視観測の像が酷く劣化した印象は受けない。(管理人の目がその程度というのもあるでしょうが(笑))
そして実際に再メッキまでして長く使うユーザーがどれほどいるのだろうか。
もはやこのあたりの話は心配する要素から除外していい。
実は初心者の望遠鏡選びが一番難しい。 なぜなら相当に欲深いリクエストが多いからだ。
なにもかも見たいのである。
いや、初心者だからこそいろいろ見て楽しめるような望遠鏡でないと
何を自分はもっと見てみたいと思うのかすら分からないのではないだろうか。
何でも見える天体望遠鏡というものは実際困難なのだが、その要求を満たすにはいくつかのハードルがある。
@ 星雲や星団も楽しみたい
→ 口径ができるだけ大きいこと10cm以上欲しい。
A 惑星を存分に楽しみたい
→高倍率をかけた時に耐えられる光学系 →色にじみが目立たないほど
焦点距離の長い屈折式か 色にじみが原理上元から無いニュートン反射式。
あらゆる光学系の中で中央部が最もシャープなのはニュートン反射式
(惑星はどのみち視野の中央部でしか観察しない)
B 初心者が手にする架台に乗る重量に収まること
10cm以上で長焦点の屈折式は相当な重量になり扱いが困難になる。
またポルタのような経緯台では支えられなくなってくる。
10cm以上で コンパクトにすると(=短焦点)こんどは色にじみが酷くなり惑星像が辛い。
となると、もう10〜15cmクラスのニュートン反射しか残らない。
構造が単純なので 見た目より軽量なのだ。
これが10〜15cmクラスのニュートン反射式望遠鏡をすすめる理由である。
7,8cmクラスの屈折では実施のところ月、惑星にほぼ限定される。
使用者が都会に住んでいて今後郊外で星を見るようなことは無いというような場合には
観察対象限定でそれも悪くない。 ただやっているうちに、きっと郊外に出かけて
星雲や星団も楽しみたいという欲求が出てくるに違いない。
そんなとき口径がもう少しないと本当に面白くない。
10cm以上の屈折は安価になったが重たくなってしまうのでどうして短焦点になってしまう。
すると今度は惑星を観察する際の高倍率に耐えられない。
安価な屈折では短焦点になればなるほど色にじみが酷くなるのだ。
短焦点屈折ですっきりした像を楽しむなら二桁万のアポクロマート屈折が欲しいが
価格的に、もはや初心者向けとは言いがたい。 そして何より口径が大きい反射望遠鏡には勝てない。
「口径の暴力」という冗談まじりの言葉はこうした場面でも使われる。
月、惑星もシャープに見たい。星雲や星団もがっちり見たい、、
そんな欲深いあなたにはもう、10cm口径以上マトモな作りのニュートン反射望遠鏡しか満足できないだろう。
VMオリジナル仕様のこのセット(VMとはビクセン直営店のビクセンマーケティングの略です)は
絶妙な内容で筆者が現時点で初心者にベストバイと言ってしまいたい製品です。
同社のWebショップ限定で販売されている販売店オリジナルセット。
余談だが、ビクセンマーケティングはビクセンのほぼすべての製品が陳列されたショールームと
ユーザーの要望に応えて生産された通好みの望遠鏡や小道具も販売している。
また相談すれば本当に親身になって先まで考えた製品チョイスをしてくれる心強い販売店。
ビクセン製品の良い所だけでなく悪いところも正直にお客に伝えた上で提案してくれる点、
手厚く良心的価格のアフターサービスも含めて考えると、最初ならこのお店で、、
と言ってしまいたいほどの販売店。 あなたが天体望遠鏡の購入を考えた時、
是非一度メールなり電話で相談してみてください。
筆者が最も信頼する販売店です。
ビクセンマーケティング(ビクセンウェブショップ) http://www.vixen-m.jp/
〒359-0022 埼玉県所沢市本郷247番地 電話:04-2944-4467 FAX:04-2944-4468
幸いにして豊潤な予算が捻出できる場合、予算の枠に縛られず、主な使用目的から選んでいくことができます。
まず最初の分かれ道が
天体写真(直焦点)をやるのか、眼視観望のみか?
最初は天体写真は考えないほうが良いと思うのですが、近い将来天体写真(直焦点)を予定しているならば、
それを見据えて揃えはじめるのも手です。
また、完全に眼視観望用の機材であっても無駄にはなりません。
といいますのは、天体写真を撮影している最中は、その望遠鏡は人間が覗くことができませんから、
結局写真用と、人間が楽しむ用と2台持参という人も少なくないからです。
なお、月の撮影はコンパクトデジタルカメラと経緯台でも十分可能です。
<作例>
2008.2.21撮影 ポルタ経緯台+12.5cm反射
谷光学製Er20mm+ミードNDフィルター
ビクセンユニバーサルデジカメアダプター
300万画素コンパクトデジタルカメラ
風景モードにしセルフタイマーでシャッターON
PhotoShop3.0.5Jにて画像処理
惑星の撮影は赤道儀とモーターが必須となりますが得意分野ではありませんので割愛させて下さい。
1 天体写真(直焦点)をやる場合
<1−1 赤道儀編>
天体写真(星雲・星団)はっきり申し上げましてかなりお金が掛かります。
具体的には、最低でも30万程度の出費は覚悟しなければなりません。
おそらく他に必要な機材も多数あるので、(一眼レフ、オートガイドシステム、画像処理ソフト等)
実際に撮り始めるころには40万ほどの出費は普通です。 一度に揃えず、予算が出来次第
すこしずつ揃えていく方も多いようです。
長時間、星を追尾して撮影する必要がある為、写真をやるなら架台は赤道義しかありません。
しかもモータードライブは2軸が半ば必須。 できるだけ追尾精度が高く、風で視野が揺れない頑丈さが
求められる為、赤道義に費やす予算配分は大変重要です。
天体写真をやるならば、下半身(赤道義、三脚)にまずお金をつぎ込むべき。
また、写真をやる場合には、撮影につかう望遠鏡の他に、追尾ズレを見張るための望遠鏡を
もう一本載せなければならない。 2本を束ねるプレート、サブ望遠鏡を載せるガイドマウント、カメラ等が加わり、
かなりの重量が赤道義に載ることになる。 赤道義の搭載重量ができるだけ大きいものを選択したい。 また、
口径が大きい望遠鏡、焦点距離が長い望遠鏡で写真を撮影する場合、かなり重量級で高額な赤道義が必要
となります。 (例 ビクセン ニューアトラクス、タカハシEM-200、タカハシJPZ等)
赤道義により、撮影に使える望遠鏡が決まってくると言っても過言ではありません。
能力に余裕のある赤道義をひとたび入手してしまえば、上限の範囲内で様々な撮影鏡を使用することができます。、
逆に軽量で短焦点の撮影鏡しか使わないのであれば、軽装な赤道義で事足りるという考え方も可能です。
大切なのは、どの赤道義でどのくらいの焦点距離、口径まで撮影可能か実情を把握することに尽きます。
念入りに調べて満足のいく赤道儀を選択してください。
どちらかといえば、入門用とされる赤道儀のほうが撮影の難易度は高い為、初心者程、高価ではあっても
頑丈な赤道儀を入手すべきだと考える人も多い。 私もそのように思います。
予算があまり許されない場合、赤道儀は予算範囲内でなるべく搭載重量が大きいものにし、
撮影鏡はなるべく短焦点で軽量なものにすることで折り合いを付けることも一つの手です。
写真をやる方は、台が支えきれない撮影鏡をチョイスしてしまう事がないようくれぐれもご注意ください。
結局望遠鏡本体を買いなおすハメになります。
<1−2 鏡筒編>
台が決まったら、搭載可能な撮影鏡を選択するわけですが、写真での撮影は眼視観望の場合よりも様々な点で
シビアさが要求されます。 まず、色にじみ(色収差)や、像の歪みがないこと、撮影対象に合わせた焦点距離の中で、
できるだけ明るいものであること、接眼部がカメラの重さでひずんだり、鏡筒がたわんだりしない
頑丈な作りであること等が求められる。 特に暗く淡い星雲を撮影しようという場合に明るさは重要となります。
<1−2−1 画角について>
初心者が写真をやろうとして陥る失敗が、画角を意識しない撮影鏡のチョイスではないでしょうか。
使用するカメラで、どのくらいの焦点距離なら、どのくらいの範囲が写せるのかを考えて選んで下さい。
デジタル一眼が主流となり、旧来の銀塩フィルム時よりも画角はぐっと狭くなっている事もあり、
「画面に入りきらなかった」などという失敗談も耳にします。 対象に合わせた焦点距離というものがある為、
写真を楽しむ方の多くは、異なる焦点距離の撮影鏡を複数持っていて対象に合わせて交換しています。
一眼レフの交換レンズが望遠鏡であると考えると分かりやすいでしょう。
最初にどんな感じの写真を撮りたいのかをイメージし、それを画面に納めることができる焦点距離を選ぶなら
大きな失敗は回避できると思います。 もちろん赤道儀の能力が許す範囲内での話となりますが。
<1−2−2 屈折式の場合>
屈折式の場合には特に注意が必要です。 レンズの種類には、2色の色域で焦点が一致する「アクロマート」と、
3色の色域で焦点が一致する「アポクロマート」が存在することは入門書にある通りです。
レンズはプリズムの連続体であるとも考えられるから、そこを通過した光は波長毎に異なった位置で焦点を結ぼうとします。
すると星の周りに虹色の光芒がまとわりつく。 これを防止するために、屈折率の異なる硝子を用いたレンズを2枚〜3枚
組み合わせて各波長が一点で焦点を結ぶように工夫されています。
アクロマートは主に眼視観望に設計が最適化されている為、肉眼で感じにくい波長は考慮せず、
他の2色について焦点が一致するように設定されている為、写真に使用すると考慮しなかった残りの波長が
色にじみとして派手に現れる。(青ハロと呼ばれる) このため
屈折式で写真をやる場合に、ほぼ全ての波長で焦点が一致する「アポクロマート」レンズの望遠鏡が望ましい。
もっとも、弊害を承知で、あえてアクロマートで撮影する向きもあるがマニアックな楽しみである。
アポクロマートレンズは、ED、SD、フローライトと呼ばれる硝子材が用いられ、概して大変高額となります。
反射式に比べて広い良像範囲を得やすい為、一時期中判フィルムでの撮影で人気が爆発しましたが、
フォーマットが小さいデジタル一眼でも、複数毎を組み合わせて広い面積を撮影する「モザイク撮影」に有利な形式でしょう。
<1−2−3 反射式(ニュートン)の場合>
一方、レンズを用いない為に、色収差が原理的に発生しないのが反射望遠鏡。
高い費用をかけて色収差を除去する必要がなく、安価にクリアーな像が得やすい為、
反射望遠鏡の基本形式であるニュートン式も写真に大変有用な望遠鏡であることに変わりない。
ただ屈折とは異なり、画面の淵にいくほど星が伸びるように写る、「コマ収差」が構造上どうしても発生します。
パラボラ鏡で受けたものを平面に写し取るならば、淵のほうが伸びることは容易に想像できますが、
これを補正する「コマコレクター」と呼ばれる補正レンズが用意されており、価格もさほど高くありません。
屈折に比べて良像範囲が狭い為、広写野の撮影がどちらかといえば苦手とされてきましたが、
フォーマット面の小さいデジタル一眼が主流となった今では、さらなる威力を発揮するのではないでしょうか。
アポクロマート屈折よりはるかに安価に、大口径で明るい撮影鏡を手にすることができるのでニュートン式も
是非選択肢に入れてみてください。
また、副鏡を吊るスパイダーによる回折像の効果も捨てがたいものがあります。
明るい星に十字が生えたように写っている写真は反射式で撮影されたもので、きらびやかな印象を与えます。
逆にそうした効果が邪魔だと感じる場合にはスパイダーのない機種か、屈折式を選ぶしかありません
スパイダーの有無による画面効果も意識してよい点だと思います。
ビクセン R200SS 反射式(ニュートン式)鏡筒
管理人も愛用の短焦点ニュートン反射望遠鏡R200SS。 架台をしっかり選べば、星雲、星団撮影の
初心者にイチオシの望遠鏡。大変明るいので短時間で撮影完了し、淡いところまでよく写ります。
また写真用途を意識して広い写野を確保するために斜鏡も大型としフルサイズデジタルカメラでも
楽々フォローします。 光軸も頑強に固定され狂った事がありません。
作例は当HPの天体写真コーナーをご覧ください。
<1−2−4 カタディオプトリック式の場合>
反射と屈折の折衷様な複合形式をカタディオプトリック式と呼び、シュミットカセグレン式、マクストフカセグレン式、
マクストフニュートン式、リッチークレチャン式、グレゴリー式(あまりない)、またメーカー派生系であるミューロン、イプシロン
VISAC(バイザック)等、個性的な設計のものが多くあります。 超短焦点ニュートンに補正光学系を入れたかのような
イプシロンと、現在殆どみられなくなったシュミットカメラを除き、殆どが長焦点で、F値(焦点距離に対する口径の比。
大きいほど暗い)が大きいものが多い為、撮影対象は直視径のちいさな惑星状星雲、系外銀河が主流となります。
焦点距離が長く、暗いために長時間の露出が必要となることもあって、撮影の難易度は相当に高い。
重量級の高額な赤道儀や、精度の高いオートガイドシステムの助けを借りなければ成功は困難でしょう。
撮影が難しいのですが、小さな惑星状星雲や、系外銀河を強拡大して詳細な構造を撮影しようという場合には
絶大な威力を発揮する形式です。 大変お金のかかるカテゴリーだと思います。
2. 眼視観望のみの場合
写真撮影を考えない場合は大変自由な選び方ができます。
人間の目は写真のように光の蓄積が効かない為、予算、収納スペース、体力、利便性が許す範囲内で、
できるだけ口径が大きいものを選択すべきでしょう。
口径が大きくなれば集光力が増す為、淡い光を感じ取りにくい人間の目でも格段に観察しやすくなります。
また口径が大きい方が面積あたりの情報量が増えるために、解像度が高まり細かいところまで観察できるようになります。
また、写真の場合とは異なり、様々な倍率、視野角で楽しんだり、より精鋭な像を求める欲求が高まる為、
アイピース(接眼レンズ)に多額の投資をする熟練者も少なくありません。 望遠鏡本体より高額なアイピースを
使っている人、アイピース貧乏といわれる人が存在するほど奥の深い世界です。 望遠鏡本体のみならず、アイピースにも
予算をしっかり残しておいてください。
もし主な観望対象が決まっているならば、その対象に適した望遠鏡というものがやはり存在しますので以下にご紹介します。
<2−1 月、惑星の場合>
月の場合にはさして口径は必要ありません。50mm、60mm、70mmでも月面は存分に楽しむことができます。
惑星も80mm程度からかなり楽しむことができます。 それ以下の口径でも小さいながら土星の輪や、木星の衛星を
観察することが可能です。
ただ、惑星で高倍率をかけて詳細を観察しようという場合には20cm以上の口径があると相当な迫力があります。
20cmクラスになると、月など宇宙船の窓から見ているような楽しさがありますし、土星の輪も二重に見え、本体の縞模様も
見えます。 木星は衛星はもちろん、大赤斑や模様の複雑な部分も覗きなれてくればかなり楽しめます。
火星なら模様や極冠もしっかり見ることができ、事情がゆるせば口径が大きいものは深く楽しめます。
この程度の口径になると反射式、カタディオプトリック式がメインでしょう。
ですが、構造上スパイダーが存在する為、特に高倍率時の惑星観察時に悪影響を及ぼします。
反射で惑星を楽しむならば、スパイダーができるだけ薄いものを選択すると良いようです。また、焦点距離が長めで、
ハロが目立ちにくい屈折望遠鏡を用いるのも一つの手ですが大口径は高額となります。
いずれにしても、月、惑星をメインとする場合には、口径ができるだけ大きいものの中でも、
焦点距離が長めのほうが良好な観察ができます。 写真ほどではありませんが、高倍率観望を楽しむ場合には
架台はなるべく頑丈なもので、微動付きのものをを選択すると楽でしょう。 慣れている方なら粗動のみで電動追尾もない
ドブソニアンでも快適に楽しめるという場合があります。
<2−2 星雲、星団、彗星の場合>
淡い対象にはとにかく口径が命です。 いかに大量の光を集めるかにもっとも左右される分野ですから、
大口径の反射式になる事が多いでしょう。 この場合、惑星、月とは異なり、淡く広がる対象を捉えやすい
広角なアイピースを組み合わせる事が多い。 肉眼では殆ど感知できない波長の光を出している星雲では
特殊なフィルターをアイピースにねじ込んで観察可能になる場合があり、フィルターも必要機材の一部と
考えて良いかもしれません。
口径を追求した結果、架台を簡素にすることで搭載、運用をしやすくした「ドブソニアン」も大変人気があります。
ただし25cm級あたりから一人での運搬や置き場所、設営に手間が掛かるものもある為初心者には辛い一面も
あるようです。 スキルに合わせて選択してください。 ドブソニアンならば価格に対しておどろくほど大口径が入手
できるのは確かに魅力です。 30cm以上になるとハッとするような像を目にすることができる為、
眼視の楽しさを知ってしまったマニアには40cm、50cmという巨大な望遠鏡を所有する人も少なくありません。
<2−3 惑星状星雲、小さい系外銀河の場合>
対象が暗い事もあり、口径が大きく、かつやや焦点距離が長いものを選択する事が多いようです。
カタディオプトリック式の一種、シュミットカセグレンやVISAC、ミューロン、マクストフカセグレンで
20cm以上の口径のものが良く利用されています。 大きなドブソニアンでももちろん十分楽しむことができますが
比較的高倍率が出せるアイピースを組み合わせての観望となる為、モーターによる追尾が楽だという声もあります。
その為組み合わせる架台は赤道儀が多くなります。 どちらかというと惑星観望に近い選択になるかもしれません。
<2−4 その他気にしておくと良い点>
用途に応じて上記1〜3のような考え方で選択していく事が多いのですが、注意しなければならないのは、
あまりに大掛かりな望遠鏡にすると設営が億劫になり、稼働率が極端に低下すること。
「良い望遠鏡は、良く使う望遠鏡である」と言われるがまったくその通りです。
大型の望遠鏡を所有する人の多くが、「チョイ見用」と称し、別にもう一台簡素で軽量な望遠鏡を持っている事も
それを物語っているかもしれません。