これから天文趣味を始めようという方、きっと耳慣れない用語が平然と飛び交うWebや掲示板、
雑誌に戸惑うことでしょう。 入門書を熟読されていれば殆どの言葉の意味は理解できると思いますが
私がこの趣味をやり始めた頃、やっぱり用語が分かると理解しやすいなぁと感じたのを覚えています。
そこで素人が素人に薀蓄をたれてしまう事になってしまうかもしれませんが、備忘の意味もこめて簡易な用語集を
作成していきます。 少しばかりのお役に立てれば幸いです。
管理人の記憶がアヤシイトリビアを、Webを巡ったり
本を読んだり、プラネタリウムで聞いたりして補強しつつ読み物風にしてみました。
極めて主観的な視点の用語集もどきをお楽しみくださいませ。
【え】
■AR-1赤道儀
かつて日野金属産業(株)(現在のMIZAR(ミザール))が発売したドイツ型赤道儀。
システム赤道儀黎明期で各社いろいろな新機軸を投入し熱かった時代の一台。
今のミザールしか知らない方なら、そのガッチリした作りに驚くに違いない。
ダイキャストではなくアルミの鋳物でできたボディで、シャフトがスチールだったり
ウォームホイルが真鍮だったりと内容もなかなか豪華。 ただ精度は贔屓目にもあまり良くない。
当時は1軸でもモータードライブが付いていたら羨望のまなざしだったように思う。
AR-1は発売時期により細部にバリエーションがあり、初期型は高度調整部にMIZARが鋳出してある。
途中からここがコの字断面のものになったが初期型のほうが堅牢である。 時期により極軸望遠鏡の
取り付け径が異なるので、少年当時に手にいれて後からシステムアップしようとした愛用者は
苦労したはず。 このAR-1はクーデ式にもなったが実物は見たことがない。
モータードライブは初期の頃のシンクロナスモーターのものから、クォーツ制御のステッピング駆動のものまで
数種類の変遷があった。 多くのユーザーの記憶に残っているのはMMD-VやMMD-QZあたりではないだろうか。
管理人が今もって手放せない思い出深い愛機である。
結構当時売れたSL100を乗っけたAR-1(木脚にMMD-V)
極軸望遠鏡のカバーは絞り加工の金属製で豪華だった。 この写真ではモーターはMMD-QZになっている。
回路はモーター内部に一体となりスイッチは停止と倍速のみというシンプルなもの。
MMD-Vのコントローラは中央のボリュームで駆動速度を微調整できた。 大変便利だったのだが、、、
極軸望遠鏡のパターン。 タカハシに似た方式。 北極星指示盤という回転式の簡易な計算尺で時角を
求める。 中央のリングは歳差のみを示すので1995年に期限が切れているがその外側に何倍かした円周上
といった感じで今でも使える。 北極星指示盤は近年まで使えるものがスターベースやCATで手に入る。
初期型AR-1オーバーホール時の写真。 部品それぞれを見ると今の入門機とは一味ちがった豪華さがある。
赤緯体が中空になっている為にクーデを組むことができた。
赤緯側は全周微動ではなく、タンジェントスクリューによる部分微動。 かなりピッチは細かい。
赤径側は全周微動。 ウォームホイルの割にウォームシャフトの精度が今ひとつなのが惜しい。
赤径軸は焼きのはいった鉄製。 これは美点の一つ。現在もAR-1愛用されている方、いらっしゃったら
是非大事に使ってやってくださいませ。 なぜかAR-1の項目だけ充実した内容になりましたが
これも遊びで作った用語集ならではということでご勘弁ください。(苦笑)
■エウロパ
木星のガリレオ衛星の一つ。 ガリレオ衛星というのは小望遠鏡やマジメにつくられた双眼鏡で木星を見ると簡単に見つかる
4つの明るい衛星。 ガリレオはエウロパを含むこれらの衛星が日々移動している事に気付き衝撃をもたらした。
中世の当時は誤ったキリスト教勢力の考えにより宇宙の中心は地球。 宇宙は地球を中心にまわっているとする
天動説が「マトモな人間」の考え方だった。 ところがガリレオは木星の周りを4つの衛星が回っているのを
その目で確認してしまったのである。 ということはこの地球も、、、、コペルニクスの地動説
(星が回って見えるのは地球が自転しているから。現代の常識)の強力な支持となった。
この観測結果を語ったゆえにガリレオは当時のカトリック教会から異端とみなされ,
事実を無理やり撤回させられたあげく、異端審問され自宅軟禁されて生涯を終えてしまったが、
この学者としてその屈辱感たるや計り知れないものがあったに違いない。 彼の伝記を読むとその正義感に共感を覚える。
彼の汚名が晴らされたのは360年後の1992年やっと教会の神学者たちが科学的な真実を誤認していたことを認めたのでした。
事実、聖書にはガリレオの考えを否定するような記述はどこにもない。 ガリレオ自身も弟子に対する手紙に
「聖書が間違うことはないが,聖書を解釈する人や説明する人は様々な点で間違うことがある。」と記述している。
彼が宗教も、科学も真実の探求者という立場でとらえていた事が伝わる一面。 さらなる余談だが、このようなテーマを
現代的なSFXで描いたカール・セーガン原作の映画「CONTACT(コンタクト)」は管理人おすすめの一本である。
劇中で法廷から出てきた主人公と恋仲の神学者が観衆の問いに答える一言と、
ジョディ・フォスタ−扮する女性天文学者が最後に子供に語る一言の真意が理解できた方は知的な感動が襲うに違いない。
ガリレオは天体望遠鏡を発明した人として有名だが、その天体望遠鏡によって,地球は宇宙の中心ではないという確証を得たのであった。
ガリレオが見たものは本当は衛星ではなく、真実そのものだったのかもしれない。
なお似たようなな活躍をした天文学者としては、アイザック・ニュートンがいる。
ガリレオ衛星は本体から近い順にイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストとなっていてエウロパは2番目に近い。
これらの衛星の動きは大変速いので、木星が見えている季節なら
だれでもガリレオのように本当に木星の周りを衛星が動いている様子を自分の目で確認できる。
もしあなたが天体望遠鏡を手にしていたならば是非いちど数日かけて「観測」してほしい。 本で読むのとはちがい大変な説得力があります。
このエウロパ、近年注目度が上昇中。 分厚い氷に覆われた衛星だが、底は液体の水があるのではないかという事で、
地球上でも深海で酸素もロクになく日もあたらない海底火山の周囲に生き物がいる事が発見され世界を驚かせたが
似たような環境がそこにあるのではないかという推測により、地球外生物の可能性が指摘されている。
このテーマで、映画「タイタニック」や「アビス」「エイリアン2」「ターミネーター2」の監督を務めたジェームズ・キャメロンが
「エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ」というドキュメンタリー作品で熱烈な期待を分かりやすく表現しています。
キャメロン好きも、深海好きも、天文ファンも是非一度ご覧下さい。
エウロパから脱線して映画のお話でオチとなるのも
当HPならではということで苦笑いしてくださいませ。
■エーテル
液体のエーテルではなく、エーテル宇宙論のエーテル。
昔、現代のように光が何も無いところを移動するには何かの媒体が必要であろうという考えから登場した
架空の物質。 光が波の性質を持っている事は光学機器をいじっている天文ファンなら周知のことだと思うが、
波であるならば何かの物質が満ちていなければ伝わらないという論法。 この当時は光が粒子の性格も持ち合わせてい
いる事が理解されていなかった為こういう考え方となった。
そこでエーテルという何かが宇宙全体に満ち溢れていてそこを伝達するというような考え方「エーテル宇宙論」が登場する。
昔、管理人の祖父がエーテル宇宙論について話していたのを思い出す。
もちろん現在はこのような考え方はSF小説や映画の中の演出として登場するだけであるが、
実は宇宙には別のものが充満しているというのが現代的な考え方。
いわゆるダークマターとかダークエネルギーと呼ばれるもの。 アヤシゲな語感だが意味としては
存在は確認できるが(数式的に間違いなく存在していると分かる)が、人間の現代の科学力では
直接的に観測できないというだけのもの。 これは宇宙の大規模構造があきらかになっていくに従ってその存在に
天文学者が目を向けるようになった。 宇宙の大規模構造とは銀河があつまった銀河団がさらに泡の表面に
張り付いたかのように中が空洞の球状の面に分布している(ボイド構造という)になっていて、一様に分布
していない様子が従来の宇宙論では説明がつかなかった。 均一になってもいいものがなぜか殆ど
銀河が存在していない空洞(ボイド)の部分がある。何かがあって押し広げていなければこのようにはならない。
しばらく前の宇宙論では宇宙は膨張を続け、あるところを境に収縮へと転じるというものだったが
こうして構造を構築しながら広がりつづける宇宙、、どうやらその考えも路線変更となったようだ。
実は宇宙で人間が今観測可能な物質はほんのわずかでしかないそうだ。
通常物質としてはたったの4%。残りは直接には見えないダークマターやダークエネルギーが占めている
とされている。 人間のもつ観測機器や概念ではまだあまり到達できない世界。
そのようなものの一つにブラックホールがあった。ブラックホールもその存在が天文学者により予測され、
かなりの時間が経った。光すら出てこれないような天体だから直接の観測はできないが、
その非常に強い重力場によりその背後にある星から出る光も曲げられる結果、ちょうどレンズのように働く
「重力レンズ効果」によるゆがめられた背後の銀河を発見したことにより、間接的ではあるが
ブラックホールの存在を映像として見ることができたのもここ数年である。
いずれ世界の天文学者は、今は見ることが出来ないダークマターをうまく観測する方法を編み出すだろう。
こう考えるとダークマターは光の媒体ではないが宇宙に満ち溢れている物体という意味で
現代のエーテルと言えるのかもしれない。
(※管理人は天文学の本を読むのが好きですが内容に不正確さがあるかと思います。ご注意ください。)
■エクタクローム
米コダック社が発売するカラーリーバサル(ポジ)フィルムの商品名。 同社には他に「コダクローム」もあった。
コダクロームは現像時に処理液から色素を導入する独特の処理を行うが、エクタクロームは通常の他社の
リバーサルフィルムのように色素は最初からフィルム乳剤に入っている。 エクタクロームシリーズの中でも
天文ファンに熱烈な支持があるのがエクタクロームE200。 プロフェッショナル向けのフィルムで、ISO感度200
ながら+2はもちろんのこと+3の増感(増感とは現像処理によりISO感度を本来より上げる手法。
+2ならISO800相当になる。 普通この処理を行うと粒子がザラつく)
でも驚くほど微粒子で、天体写真でよく見る赤い星雲はこのフィルムで
撮影されたものが一頃多かった。 赤にとことん強いフィルムで、赤い星雲には欠かせない。
長時間露出をしてもカラーバランスがめちゃくちゃに崩れることもない(やや赤にかたよるが、、)
管理人も熱烈愛用中のフィルムである。 残念ながら2008年初旬に120サイズ(中判サイズ。ペンタックス6X7などで使う)
が生産販売中止となった。 35mmのほうは継続販売で皮一枚残ったという感じだが、このフィルムで天体写真を楽しむ
多くの人が中判での広々とした直焦点でしょうからフィルム好きな天文ファンは心的ダメージが大きかった。
大量に買い込んで冷凍している人もいるのではないだろうか。
管理人が仕入れたE200生産中止間際のもの。 いつまでもつか、、、
■エクステンダー
天体望遠鏡のオプションで、その望遠鏡の焦点距離を伸ばすための追加光学系。
より高い倍率が欲しい場合や、直焦点撮影で拡大率を上げたい場合等に使用する。
眼視用途では同様のものにバローレンズがあるが、こちらはそれぞれの光学系にあわせて
設計が最適化されており、直焦点での使用も視野に入れている。
通常はオプションだが、一部のニュートン式で副鏡の前にエクステンダーを最初から組み込んで
コンパクトな割に焦点距離が長いカタディオニュートン式も存在する。(ビクセン プラネットRC125等)
短焦点な望遠鏡にはオプションで存在している事が多い。 比較的汎用性のある望遠鏡に
焦点距離を伸ばすエクステンダー、逆に焦点距離を短縮するレデューサの両方を買い揃えると
1本での守備範囲を広げて楽しむ事ができる。 末永く手持ちの望遠鏡を使うならば
買えるうちにかっておいたほうが良い。(付加光学系は本体の生産中止より前に入手不能になる事が多い為)
■AGA-1
ビクセンが発売するオートガイダー。 AGAはオートガイドアダプターの略。
アナログ式のCCDビデオカメラを使用し、ガイド星は市販のポータブルTVで確認する。
生産中止となったが、復活を望む声が大きい為か限定再生産され現在(2008年9月末)
入手可能である。 ご所望の方は今のうちに入手しておくことを強くおすすめする。
操作ボタンはたったの4つのみで、使い方は大変簡単。 簡単な割に高精度なガイドが可能で
その実力を知ってしまったら手放せないというファンも多い(管理人もその一人です)
カタログ表記をはるかに超える長焦点でもガイドが可能で、このような精度がこれほど
簡単操作で得られるのかと驚くものだ。 見るからに安っぽいケースに入っているが
その働きぶりには脱帽ものである。 もしこれから天体写真をはじめようという方ならば
最初に使うオートガイダーとして管理人イチオシである。
最もより高精度な方法はいくらでもあるが、簡単で扱いやすいという点は、使用頻度を
上げてくれる為パソコンを使うオートガイダーとは一線を画する魅力がある。
慣れればわずか30秒で設定が完了するので次々と天体を変えて撮影できる。
この装置にして一晩に撮影できる天体の数が増えたという方も多いのではないだろうか。
過去にSBIG社のST-4が人気を博したが今もってユーザーが少なくない様子を見ると
パソコンレスなオートガイダーがいかに便利かがわかるのかもしれない。
AGA-1については当HPの記事で詳しく解説している。参考にして頂ければ幸いである。
■ST-4
SBIG社が発売していた冷却CCDカメラヘッドを持つパソコンレスなオートガイダー。
冷却CCDが民生用として普及するための火付け役となったにちがいない。
また、直焦点撮影を長時間行う天体写真ファンから絶大な支持があり現在も愛用者が多い。
冷却CCDヘッドを採用している為、オフアクシスガイド等の微弱な光のガイド星しか使えないような
環境で使用できた点や、パソコンが不要であった点は魅力的。
ただ扱いが少々面倒で、たとえばAGA-1では赤径軸が水平になっているかどうかはモニターに
写しだされる十字線の1本と水平にすることで行うが、ST-4はX、Y枚にあるLED表示のデジタルで
数字をみて確認する。 キャリブレーション(モーターの駆動速度やバックラッシュ等を機械に
把握させる操作)もパラメータが多く高度な設定ができる代わりに思うように動作するまでに
随分ノウハウが必要なのだそうだ。 AGA-1はボタン一発のオートキャリブレーションである。
ただしAGA-1はカメラの感度がこのST-4の足元に及ばない為明るいガイド鏡を必要とする。
簡単を臨むならAGA-1だが、精密に撮影可能なオフアクシスガイドやより煮詰めたい人は
ST-4というような棲み分けになっていたのではないだろうか。
とても普及した為に、多くの海外製天体望遠鏡のオートガイド端子はこのST-4互換の
コネクターになっている。
最近人気が出てきた廉価な冷却CCDガイダーの本体ポートについているものもある。
AGA-1とは電気的にはピン配列が異なるだけなので、配線を繋ぎ返ればビクセンの赤道儀でも
使用可能である。 逆にこれまでST-4が装着されていた天体望遠鏡に同様の方法で
AGA-1を取り付けることも可能だ。 変換ケーブルなどを作成しておくと便利である。
■SBIG (http://www.sbig.com/)
冷却CCDではデファクトスタンダード的なメーカー。 ST-4で天文用に個人で購入できる製品を
世に送り出した。 個人で手にいれることが可能にはなったがやはりまだまだ
庶民には遠い世界に感じられる価格設定。 天体写真用途がよく着目されるが、純粋な観測目的
でも大活躍している為、半ばプロユースということなのかもしれない。
特徴としては、撮影用のチップのすぐ横にガイド用のCCDをもう一つとりつけ、カメラ本体のみでガイド環境が
完結するセルフガイドシステムが大変魅力的である。また、大気の揺らぎを高速駆動するペリクルミラーにより
能動的に補正する補償光学系(アダプティブ・オプティクス)、AO-7によるシーイングキャンセルは、
天文台の巨大望遠鏡でしかなかったものを個人ユースとして提供した。
なお日本国内では国際光器が代理店となっている。
■NGC
M31やM57のようにMナンバーで呼ぶメシエ天体よりもさらに網羅率を上げた天体カタログ。
New General Catalogue の略である。 NewというからにはNewじゃない普通のGCも存在している。
天王星を発見したり、天の川が構造を持っている事を見出した天文学者
ウィリアム・ハーシェルとその息子が作成したのがGC。
これをさらに補強して網羅率を上げたのがNGCである。
メシエカタログでは110しか網羅されていないが、NGCは7840個もの星雲、星団がナンバリングされている。
Mナンバーのある天体はNGCナンバーも同時に存在することになる。 だが慣例上、M天体はMナンバーで
呼ぶ事が多い。 先達の偉業を尊重しているのもあるが覚えやすいという実益のほうが大きいかもしれない。
Mナンバーの天体は双眼鏡や小望遠鏡で比較的容易に観望可能なものが殆どだが、NGC天体は写真観測しないと
見出せないものや大口径が必要なものも多く、系外銀河を楽しむ観望派や写真撮影で肉眼で見えない星雲を
狙う人には欠かせないカタログである。 他にIC(インデックスカタログ)とうものも存在する。
■M天体(メシエカタログ)
メシエ天体の略称。 メシエカタログに記載されている天体を指す。 星図ではM78、M31のように記載されている。
シャルル・メシエが自ら行っていた彗星探索の際に、似たようにぼんやり見える淡い天体を誤認してしまわないよう、
一覧を作成したのがこのメシエカタログである。 当初103個だったがあとから付け加えられたりして現在110となっている。
当時の望遠鏡の能力から、現在では天文アマチュアが小望遠鏡で観察したり、双眼鏡でながめたりするのに
最適な星雲・星団の一覧となっている。 一晩でM天体をすべて見てしまおうというゲーム、メシエ・マラソン
もこんな手ごろな数や明るさのカタログだからこそ楽しめる。 競う必要はないが、天体の位置を覚えると
星空とより深くつきあえるので、覚えるつもりで一人メシエハーフマラソンなどいかがでしょうか。
■M型双眼鏡
日本光学(現二コン)が発売したMIKRON(ミクロン)双眼鏡と、それを模して作られたミクロンタイプの双眼鏡。
特にビクセンではこの略号のなごりから、現在でもM型としてコンパクトタイプの商品コードにしている。
(ちなみにZ型はツァイスタイプ、B型はボシュロムタイプ、H型はその形状からダハタイプとなっている。
ツァイスタイプは鏡筒部がミラーボックスと一体になっていないポロプリズム機で、昔のツァイス社の
伝統的な双眼鏡の形状を模している。 多くの方に馴染みのある形状のもの。ボシュロムタイプは
鏡筒部、ミラーボックスを一体成型し防水性を高めたポロプリズムで、その原型はボシュロム社の
伝統的な形状に由来する)
このミクロンタイプの特徴はなんといっても全ての贅肉を削ぎ落とし、機能部品だけにした機能美に尽きる。
そしてこれは特に本家ミクロンよりも、一昔前にこぞって生産された日本製のミクロンタイプに見られる
鏡筒部の旋削加工がチャームポイントではないだろうか。 分類としてはポロプリズムタイプ。
鏡筒部が接眼部より内側にあり軽量コンパクトなのも特徴の一つ。 但しこの種の製品は量産に向かない為に
国産のミクロンタイプは本家の復刻を除いて絶滅してしまった。 一説によると板橋の小さなメーカーが
細々と生産しているというウワサがあるが定かではない。 国産のような加工の美しさはないが一応
ミクロンタイプとしては韓国製のものがケンコーのクラシックシリーズとして入手できる。
管理人も国産のミクロンタイプとビクセンの韓国製ミクロンタイプを愛用しているがいずれも小さく
カバンにそっと入るので旅先でも重宝している。 特に国産のミクロンタイプはキラリと光る加工の美しさと
メカチックな細部がたまらなく魅力的だと思うのは私だけだろうか。
■LX200互換コマンド
自動導入天体望遠鏡ではビクセンよりも後発でしたが、その普及で世界を蹂躙したのがミードの望遠鏡。
いまや自動導入といえばミードというくらい有名です。 その中のLXシリーズはシリアル通信が可能な
コントローラを備え、星図ソフトからの位置情報、動作情報をコマンドで送受信することで
パソコンとの連携が可能となった。 広く普及した為に望遠鏡制御を視野にいれた星図ソフトの多くが
LX200に対応した為、他社のコントローラでもLX200と互換性のあるコマンドセットを内臓するようになった。
オートガイドソフトでもジェネリックLX200コマンドとして選択可能だったり、ビクセンのスカイセンサーも
通信コマンドとしてLX200コマンドセットを利用できるように切替が可能だったりする。
比較的簡単なコマンドなので、パソコン通信の経験のある方ならばコマンドの意味を理解したり
自作ソフトも可能なはずである。
■LEアイピース
タカハシの販売するアイピースの商品名。 ハイアイレリーフでシリーズ内での合焦位置をそろえるなど、
ビクセンのLVアイピースと似たようなコンセプトで設計されているが、実際に管理人が比較した事がないので
その像質や覗きやすさについてはコメントを控えることとする。
■エルフレ(Er)
古典的アイピースの中では広角アイピースに属する。
前郡2枚、中郡1枚、後郡2枚の3郡5枚のレンズ構成。 古典的アイピースの中では
レンズ枚数が多い。 その為か昔はかなり高額な製品だったのだそうだ。
カールツアイスのハインリッヒ・エルフレ氏の設計による為その名が冠されている。
元々は軍事用途だった。(索敵用だろう。しかし名品アイピースはツァイス設計のものが多い)
エルフレは彗星探索者ご用達のアイピース形式だったが現在では各社より超広角で、
かつフラットな超高級で超高性能なアイピースがゾクゾク発売されており
少々マイナーな存在となってしまった感がある。 当時としてはかなり高額な部類で、あこがれの
アイピースだったという方もいるはず。 現在では国産もふくめ純粋なエルフレは絶滅危惧種だが
その性能はバカにならない。 視野角は60度程度と今時の派手な広角アイピースには抗うべくもないが
のぞいた時の広々した開放感も、無理のない視野角の為に周辺像の崩れも有りはするが気になるほどでもない。
シンプルに作られているせいもあるのか、いわゆる「抜けのいい」感触だと感じている。
現在では谷光学研究所がほそぼそとEr16、Er20、Er25を生産している。 管理人お気に入りのアイピース郡。
特に25mmは強力におすすめしたい。
短焦点屈折や反射にとりつけてRFT(リッチフィールドテレスコープ:広視野望遠鏡)として楽しむのが
よくあるスタイルだが、長焦点にこれをとりつけて、思い切りバックが黒くしまった視野でチリッと輝く
星めぐりもおすすめである。 Fの長い古い反射などで威力を発揮するので是非お試し頂きたい。
■LVアイピース
ビクセンが販売する約20mmのアイレリーフを持ち、同社の中では高級アイピースに分類されている。
LVのLはランタニウム【lanthanum】の頭文字。 元素記号はLa。 酸化ランタン(La2O3)を加えることで高屈折で
低分散(高アッベ数)なレンズが製造される。 稀土類ガラスの一種である。
SDレンズの望遠鏡などにも一時採用されていたような硝材でかなり贅沢な部類。 今時でいうなればEDアイピース
のようなものと思っていいだろう。 設計は旧日本光学の脇本善司氏の手によるものだと、旧ビクセン光学の
古老氏の談にあったが、この頃のビクセンは性能は利用者各人の感覚におまかせするとしてものすごくコダワリがあり
ユーザーとしてもワクワクさせられた。 LVアイピースの実際だが、このアイピースのチャームポイントはとにもかくにも
長いアイレリーフである。 特に2.3mm(輸出版。表示誤差のため、国内の2.5mmと同じと云われる)や3.8mmのように
従来のアイピースでは眼球がレンズに触るのではないかというほど目を寄せなくてはならなかったものが
普通にサッとのぞいて見ることができるのは特筆すべきものがある。 これは使いたいアイピースの倍の焦点距離の
アイピースに2倍のバローレンズを組み合わせてアイレリーフを倍近くかせごうとする使い方(たとえばOr4mmを使おうとして
覗きにくいと思った人が、Or8mmに2倍バローを組み合わせて実質Or4mm同等の倍率にするような方法)
に似た仕組みを内臓している為である。 バローレンズと決定的に異なるのは、それぞれのアイピース毎に最適化された
設計のレンズで、一般的にスマイスレンズと呼ばれる。 バローレンズをかませると像が幾分甘くなるのは多くの
天文ファンが知っている事だが、時として像質よりも覗きやすさを優先したい場合もある。
LVアイピースはこの為に生じる像の劣化を抑えるためにかなりの労力を払っているはずだ。
これは個人的な感想であるが空のコンディションによってLVアイピースで惑星像が妙にしっとりと締まって見える
と感じることがある。(抜けがいいという表現ではなく締まった、、という表現が適当でしょうか)
普段惑星を観望する場合にはシンプルなレンズ構成ゆえに「抜けのいい」と定評のある谷光学のOrを多用するが、
時折LVに差し替えて楽しむ事もあるから同じ対象も同じ焦点距離で他の形式や他メーカーなど
様々な「視点」を楽しむのはいかがだろうか。
覗きやすさを優先しているアイピースなので、不特定多数が覗く観望会で活躍するであろうアイピースである。
ところで、アイピースは好みや主観、コダワリがものすごく現われる部分だから他人の感想は
あまりアテになならないし、議論するのも不毛である。 ご自身にあったアイピースで楽しむには実際に現地で
いろいろな人にのぞかせてもらうしかないと管理人は断言致します。
良いアイピースとはあなたが気にいったアイピースなのです。
■エンコーダ
アナログ情報をコード化する仕組み。 天体望遠鏡では位置情報をパルスの数でカウントできるようにするロータリーエンコーダを
単にエンコーダと呼ぶことが多い。 自動導入の採用された赤道儀や経緯台のモーターや、ギヤボックスに円盤状や円筒型の
エンコーダが内臓されている。 しくみは光学式のものと、磁気式のものがあり、光学式のものは玉式のマウスと同じく、
円盤に放射状に細かくあけられた細いスリットに光を当て、反対側のフォトトランジスタで感知する。 光をスリットが遮った回数を
カウントすることでどれだけ回転したかを数えることができる。 たとえばモーターの軸が1周するとその端にとりつけられた円盤の
スリットが120本空いていたとしたら、120パルスでモーター一周。 60パルスで90度、30パルスで45度、、、となる。しかし一周
360度だから120パルスでは最高に細かい動きとしては3度までしか判別できない。 これがエンコーダの分解能である。
3倍減速のギヤボックスを介してあれば1パルスで1度、10倍減速のギヤボックスを介していれば、、、とどんどん細かくすることもできる。
実際の赤道儀や経緯台はこのように減速ギヤを介してある為モーターは何周もしてやっと1度動く。 ゆえにかなり精密な動作が
可能なのである。 このタイプではギヤについているエンコーダで位置を拾うために、アライメント完了後にはくランプをゆるめて
手動で動かすと位置がずれてしまう。 逆にモーターではなく機械側についているものであればモーターがつながっていてもいなくても
位置を常に拾うことができるが減速されないのでかなり細かいパルスが発生できるエンコーダを装備する必要がある。
余談だが、ビクセンの販売していた自動導入装置、スカイセンサーではエンコーダパルスの比率を自在に設定できるので
市販のロータリーエンコーダを入手し使用することも可能である。 この手の製品としてはビクセンのステラガイド、国際光器の
スーパーナビゲーター等が有名。 主に眼視観望派に人気の高い製品である。
■遠征(観測)
光害の多い市街地に住むために、星の観望環境に恵まれない人たちが星空を求めて郊外に出かけて観測、観望する事。
車に観望、撮影機材を満載し人里はなれた高原や山腹の駐車場等に夜な夜な出動する。
本来夜になればふつうに満点の星空が見えているはずなのだが、悲しいかな人間自らの手で星空を追いやってしまった。
それをまた人間は追いかけるのである。 月が細くなる新月期になると有名な星見スポットにはあちこちから天文ファンが
やってきて共に星を愛でるのであるが、ここでは他の天文ファンとの親しみや、情報交換を楽しむ事も大切な要素という場合もある。
ただフォトコンテストに入選することだけが目的の天体写真ファンばかりが集まる場所もあれば、マナーを保ちつつ
スターパーティさながらの雑談、お茶会で盛り上がる場所もある。
どれ良いとか悪いとかではなく、狙う目的に合わせて場所選びをしての遠征となれば各々じっくり満喫できるに違いない。
管理人も落ち着いて写真を撮りたい場合などは人気の少ない場所をあえて選ぶ事もあるが、
時には誰かと星談義に興じたい事もある。 ただ誰もが願うのは綺麗な星が見たいという事。