これから天文趣味を始めようという方、きっと耳慣れない用語が平然と飛び交うWebや掲示板、
雑誌に戸惑うことでしょう。 入門書を熟読されていれば殆どの言葉の意味は理解できると思いますが
私がこの趣味をやり始めた頃、やっぱり用語が分かると理解しやすいなぁと感じたのを覚えています。
そこで素人が素人に薀蓄をたれてしまう事になってしまうかもしれませんが、備忘の意味もこめて簡易な用語集を
作成していきます。 少しばかりのお役に立てれば幸いです。
管理人の記憶がアヤシイトリビアを、Webを巡ったり
本を読んだり、プラネタリウムで聞いたりして補強しつつ読み物風にしてみました。
極めて主観的な視点の用語集もどきをお楽しみくださいませ。
【う】
■ウェイト
オモリの事だが、天文ファンの多くは赤道儀のバランスウェイトのほうを思い浮かべるのだと思う。
カウンターウェイトの事をさしている事が多い。 ドイツ式赤道儀の場合、鏡筒と反対側にバランスが
とれるようにオモリをとりつけて重たい鏡筒があっても軽い力で向きを変えられるようになっている。
天文台にあるような巨大な望遠鏡でもしっかりバランスが取れていることもあって、クランプ(固定)を
解除した後に手で動かせたりするところもある。 バランス取りは安全の上でも天体写真撮影の上でも
大変重要な事だ。 たかがオモリだがその役割は大きい。 全体の重量を軽減する目的で、支点からの距離を
大きくする事で同じオモリで釣り合いを取ることを狙った、通常より長い「ロングウェイトシャフト」を小型軽量な
赤道儀で使う事もある。 移動観測派の人にとっては機材はできるだけ軽くしたいが無くては困るという
悩ましい存在がこのウェイトなのである。 海外遠征をされる方はペットボトルに水をいれたものをバランスシャフトに
くくりつけたりと涙ぐましい努力が見られる。
■うさぎ座
ちょっとマイナーな星座だが、実は多くの人がその目で見ているかもしれない。
小学生でも知っている冬の星座、オリオン座、これの下にある。
星座絵ではオリオンのオジサマに踏みつけられている不憫なうさぎさんである。
もともとオリオンは森の荒くれ者で、森のなかででくわす動物をかたっぱしから
手にもつ棍棒で撲殺するというトンデモヒーロだが、このうさぎもその被害者(獣)の一人だろう。
実際の星空では南を向いてオリオンを見た時の右下の明るい星、リゲルの下に
鋭角にVの字になっている星並びがみつかったら、それがうさぎの耳とみたらいい。
■うしかい座
一等星のアークトゥルスが目立つ春の星座。 詳しくはアークトゥルスの項目を参照のこと。
■海(月)
(管理人撮影。VC200L+レデューサ D40無改造 GP赤道儀 ISO200 1/250秒露出)
月面には「海」と呼ばれる地形がある。 肉眼では黒っぽく、双眼鏡や望遠鏡ではのっぺりとした
平らで黒っぽいところ。 日本でいえばうさぎの絵のところだ。(この部分はカニだったり、女性の横顔だったりいろいろな見方がある)
これらの海と呼ばれる月面の地形には「静かの海」とか「危難の海」とか意味深な名前がついている。
だが実際に水がないことは現代の人間なら双眼鏡で見たって直ぐに分かる。
海に見立てたということなのだが、実際に海のようにくぼみがあってできた地形で黒っぽい。
はるか昔に降り注ぐ隕石により穴が空いた結果クレーターとなるが、内部の溶岩が噴出し低い地形のところに
液体状の溶岩が流れ出して固まった結果あのようななめらかな表面になっている。
その時代の月にはクレーターで皮が薄くなったところから噴出すようなマグマがまだあって冷えきっていなかった
というような説になっている。 マグマ由来なので黒っぽい玄武岩。
天体望遠鏡で観察すると、海というのはなぜだか丸い輪郭の中にあることが多いことに気付く。
そう、それは元々隕石孔(クレーター)だったなごりと理解してみたら面白いだろう。
こうした事を知っていて月面観望するとまた見方が違ってくる。
実はこれを海と命名したのはあのケプラーである。 屈折望遠鏡の基本形式となっているケプラー式望遠鏡を
発明したあのケプラーだ。 彼は黒っぽい部分を海だと思ったのだろうか。 当時の天体望遠鏡の性能からすると
今のお子様用のオモチャですら過激な性能であるに違いない。 ケプラーもあこがれるような望遠鏡は天文ファンなら
みんなもっている。 時には初心に戻りじっくり月面観望で一夜を明かすというのも悪くないだろう。
■ウラノメトリア(ユラノメトリア)
昔のドイツの天文学者、バイエルが世に出した全天星図。 バイエルというのはα星とかβ星とかのバイエル記号を
つけたあのバイエルだ。 北半球に住んでいた昔の人たちにとって南天の星図まで揃った初の全天星図は
衝撃的であったに違いない。 1600年代これはものすごい事だったと思う。 ではバイエルは南半球に出かけて
星図を作成したのか!? どうやらそうでもないようなので別の作者が隠れているのだろう。
ちなみにウラノメトリアのウラノは、ギリシャ神話のウラノス(測る神)から来ているらしい。
同名のプラネタリウム投影機ウラノスもそこから命名したのだろうか。
現代において、主に眼視観望をやりこんでいる人や、観測目的で星を見ている人にとって
ウラノメトリアとはウラノメトリア2000の事。 2000年分点で作成された現代版。(星も殆ど動かないように見えるが50年も経つと
位置が微妙にずれてくるので50年ごとに星図を改訂する。その切替が分点)
■ウルフネット
星空を天球に見立てた際に、どの赤緯、赤経に星があるのか星図で探したり記入したりする際に便利な
丸の中にネット上のクロスラインを引いた定規のようなシート。 手書きで星図を作成したり、
観測の際に星の位置を星図からしらべたりという作業に使える。 最近では位置がデジタル表示される
望遠鏡やパソコン星図の登場でほとんど出てこなくなってしまった。 ひょっとしたら紙の星図さえ持っていない
天文ファンもいるのではないだろうか。 やはり紙媒体のものはじっくりやるには欲しい。
ちなみに同名の星景写真の同好会もある。 某プラネタリウム解説員の方が熱烈活動中だが実にすばらしい
写真を撮られている。 やはり本当に星が好きでたまらない人間が、実際に星の下で時間を過しているだけあって
その解説も大変ムーディーだ。 プラネタリウムの解説は日頃星を自分の目で見て観察、観測している人間に
してもらいたいものだと思うのは私だけだろうか。 余談だが。